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猫・ショートショート あと67話
マリとジジ(その2)

mari jiji 2

12時過ぎになって芝生に夜露が下り始める頃には、広い農家の庭は客であふれ、パーテイは最高潮に達した。無数の即席のライティングが目もくらむばかりだ。
デザイナーやアーティスト風、学生や近所の農家の人と思しき夫婦たち、子供たちが、喋ったり踊ったり食べたり飲んだりしていた。

マリが顔見知りのデザイナーと挨拶をし終わった後、エルネストの姿が見えないのに気がついた。
マリは人ごみの中を探しながら、いつの間にか裏庭の方に迷い込んでしまった。
農機具や眠りに落ちている家畜の小屋などがあるところで、その付近には人の姿はまったくなかった。

マリが再び人々の方へ帰りかけたときだ。人の気配を感じて、彼女はレンガの柱に身を隠した。
おぼろげな裸電球の中に一組の男女が現れた。
彼らはしっかりと抱き合った。
エルネストと花嫁の従姉妹だった。

カップルは体を離すと、手を取り合って真っ黒な雑木林の方に向かって戯れるように歩き出した。柵のところで、まず男がスポーツ選手のように身軽に飛び越え、それから女に手を貸した。彼女の明るいドレスがぼんやりと蝶のように舞うのを見ながら、マリはその場を去った。
            *

真っ暗な夜の道をマリは車を飛ばしていた。道は広くはないが、舗装されていたのでスピードをだせた。もう、2時頃ではなかろうか。
彼女は嫉妬と絶望に打ちひしがれながらも、後悔の念が心身を蝕むのを感じていた。

かなり急なカーブがあって、そこを通過したときに、白い息を吐いたようなヘッドライトの前方に、何か白いものを見た。それは真っ白な猫が道路をふさぐようにして横たわっているのだった。
はっとして、マリはブレーキを踏んだ。
「ジジ!」
そのときだ。彼女は追突され、身体が前に押しやられた。
彼女が車を飛び降りたとき、50メートルも離れた後ろに、片目を失った怪物のような自家用車が斜めによがんで止まっているのを見た。
飛び出してきた中年の男がわめいた。
「バカ野郎!こんなところでブレーキをかけやがって!」

「死んだ猫が道をふさいでいたから、ブレーキをかけたのよ!」
マリは我を忘れて叫んだ。今までこらえていた苦痛がせきを切ったようだった。
「嘘だと思うんだったら、ここまで見にきたらいいじゃあないの!」

いかなる理由にしろ、追突した者が不利になるのはわかっている。男はそれを知っているのか、マリの剣幕に驚いたのか。再び片目の怪物に乗り込むと、乱暴にエンジンをかけた。
猛烈な勢いで前進してくるのを見たとき、マリはとっさに刈り入れ前の稲畑に転げ込んだ。瞬間、自分はあの車に殺されるだろうと思った。
だが、片目の怪物は起用にマリの車を避けると、あっという間に闇の中に消えていった。

ヘッドライトで照らし出された白い物体は、猫の死体ではなかった。
それは女が身につけるショールに他ならなかった。
長いことじっとそれを眺めていたマリだったが、やがて力なくうずくまると、声を出して泣き出した。(K)


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| 猫.cats,gatti 100の足あと | 22:14 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート /あと68話
ジジ

マリとジジ (その1)

「マリ、ボクとネコとどっちを選ぶ?」
エルネストはベッドの中でささやいた。
マリは答えることが出来ず黙っていた。

            *

フリーのブックデザイナーとして働くマリは一匹の白ネコと暮らしている。
それほどネコに関心があったわけではないが、あることから突然、この白ねこと暮らさなければならぬ羽目になったのだった。

半年前まで郊外の叔父夫妻の家に住んでいたマリは、仕事上不便を感じて都心でアパートを探していたが、そんな彼女に意外と早く手が差し伸べられた。

知人を通して紹介されたアパートは、運河添いのアーティストがいっぱい住んでいる、便利のいいところにあって、環境もよく、仕事をしながら一人で住むには十分なスペースがあった。しかも家賃は予想の半額くらいだったのだ。

家を見に行ったとき、ソファーで寝ていた真っ白なネコが、むっくりと起き上がって、半開きの青い目でマリを見た。
家主である女性は猫を抱き上げながら言った。
「このネコの面倒をていただきたいの。それが条件よ。死んだ母がとってもかわいがっていて、嫌がらずに見てくれる人に住んでもらうようにって、言い残したの」

マリは条件を受け入れた。
「これであたしも安心してボストンに帰れるわ」
家主の女性は契約が終わったとき、ほっとしたように言った。

午後引越しをしてきたマリが部屋の整理の途中一息ついていると、白いネコは彼女のひざの上に上ってきた。
マリは「よろしくね、ジジちゃん」と、ネコを抱き上げた。
            
マリはブック見本市でひとつ年下のエルネストという編集部員と知り合った。
交際を続けている間に彼女は、その男に夢中になってしまった。
30過ぎていても、今まで恋に落ちた経験は一度もなかったマリだったのだが。

初めて彼を我が家に招待したとき、エルネストは叫んだ。
「ネコがいるんだな。僕はすごいネコアレルギーなんだよ」
「あなた、我が家に猫がいることは知ってたはずよ」
マリは抗議した。
数分も立たないうちに目から涙が出てきて、エルネストは苦しげに叫んだ。
「ボクは、猫はだめなんだ。ボクは帰る」
彼はそう言い残すと、アパートを出ていってしまった。

翌日、エルネストはネコを飼っている以上、君と一緒になることは出来ないだろうと言ってきた。

エルネストを選ぶかネコのジジを選ぶかを迫られたマリは悩んだが、結局、彼を選んだ。
今、彼と別れたら、一生愛する男にめぐり合えないという不安があったのだ。

「あの男には要注意よ。ハンサムだけどね」と、友人に警告されたマリだったが、それはやっかみだと、マリは聞き流した。

思案した結果、マリはネコを叔父夫妻のところに預けることにした。
姪を愛している彼らは、それを受け入れた。

ボストンにいる家主の女性から、
「すべてうまくいってる?」とメールが入ったときマリは、
「すべてOKですよ」と返事を送った。

       *
マリは親友のアンナから、結婚招待状を受け取った。
乗馬で結ばれた新郎新婦は、市から30キロも離れた農家の庭で披露宴をやるということで、マリはエルネストと、この招待を受けることにした。
披露宴は夕方7時頃から、明け方までのノンストップと招待状にしたためてある。
「私たちの祝福とともに、あんたも一夜徹底的に楽しんで欲しいわ」と、アンナの手書きの補充もあった。

初秋の日が沈む頃、刈り入れもま近かな田園の中を、2人はマリの車でパーティの会場へと走った。

鉄格子の大きな門の外は、すでに招待者の車やバイクでいっぱいになっていた。
百姓風の若いグループがサクソフォーンとギター、コントラバスのトリオで会場を盛り上げている。

大勢の客で混雑する中で、マリは新婦と新郎をエルネストに紹介した。
そこには、もう一人の女がいた。
花嫁アンナの従姉妹でジュリアという娘で、この深夜パーティのオルガナイザーとのことである。

ジュリアに熱い視線を注ぐエルネストを見て、マリは動揺した。(つづく)






| 猫.cats,gatti 100の足あと | 05:27 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫ショートショート/ あと69話

yanaci

同居猫ヤナーチ 

靴とコートを放り出し、狭いベッドに疲れた身をなげだそうとした時、腹を空かせた猫のヤナーチが、のっそりと窓から入って来て、若者の足許にすり寄った。
「おまえ、腹へってンだな。今日はネズミの収穫はなかったのかい?」
若者は人間に話すように声をかけ、冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫の中には人間のためにも猫のためにも、何も食い物はなかった。

「あ、お前運がいいぞ。いい土産があるんだ」

サンドイッチの食べ残しを持って帰って来たのを思い出したのだった。
残業が終っての帰り道、夜更けのバールで、ビールと一緒に流し込んだサンドイッチの残りだった。

最後の僅かの牛乳も与えたが、猫がそれだけで満足するはずがない。
ミャオと泣いたが、無駄だと分ったのか諦めたようにベッドに登って来て、若者の足元で丸くなった。

「オレだって腹減ってんだ。我慢しな」

正直言って若者は、猫など飼う気持ちなどまるでなかった。
このヤナーチという猫は、勝手に入って来た奴だし、今でも出て行きたいなら出て行ってくれと若者は思っているほどなのだ。

幸いにして、この猫は糞や小便をこの家の中でしたことがない。便意や尿意を感じると、出してくれと泣くので窓を開けてやる。そしてしばらくしてから、さっぱりした顔つきで戻ってくる。

ある夕方若者が仕事から帰って来ると、ヤナーチは窓のところに座って凄い形相で彼を睨みつけていた。
窓を開けて出かけるのを忘れていたのだ。

猫は気でも狂ったように飛出して行った。
いったい何処で始末をするのか今でも若者には分らない。
この近くに、でっかいテラスのある家があって、そこの植木の鉢の中で始末するのか、寂れた工場の屋上あたりで、やるんだろうなどと考えた。
この猫が殺されるとしたら、糞や小便で辟易しているテラスの持ち主か、工場の荒くれ男の仕業だろうなどと若者は考えるのだった。

この猫が、厚かましくここが自分の本拠だと居座ってしまった経緯はこうだ。

彼の屋根裏のアパートの隣に、もう一つ同じようなアパートがあって、そこに、中年のだぶっとした、不愉快な感じの女が独りで住んでいた。
話しかけたことなどなかったから、クロワツィアの人間かポーランド人なのか、さっぱり分らないが、イタリア女ではなさそうだ。とにかく彼女がこの三毛猫を飼っていたのである。

2、3度、廊下で女が『ヤナーチ! ヤナーチ!』としゃがれ声で呼んでいるのをドア越しに聞いて、若者も名前を憶えたのだった。
この三毛猫が女の窓からはい出して、すぐ隣の若者の家に通うようになった。

斜めの天井窓を開けていると、いつの間にか忍び込んでくる。それがあまりにも度がはげしいので、ある日彼は首を引っ掴んで隣の家のドアを叩いたら、例の女が出て来た。

肥り気味の不潔そうな醜い女だった。何か料理をしていたらしく、妙な煮詰めた匂いが鼻をついた。
『これはあんたんところの猫でしょう?』

そう言って床に下ろすと,猫は諦めたように、のろのろとドアの中に入って行った。女はブスッと黙りこくったままドアを締めた。

彼は不快を感ぜずにはおれなかった。こういう類いを無知で品がなく、いわゆる下層階級の人間なんだろう。(悲しくも自分も含めての)。
でも、オレだっていつかは・・・若者はそう自分を納得させていた。

窓を開けはなしにしていると、猫は必ず入って来た。また首筋を掴んで彼女のもとに連れ戻すことを繰り返したが、ある日、いくらドアを叩いても返答がない。

彼女は猫をこっちに押し付けたまま引き払ってしまっていたのだ・・・

                      *

若者に今までの生活から一新する時がきた。
今まで安くこき使っていたオーナーが病気で引退したため、下請けの印刷工房は某会社に買い取られた。
新しい若いオーナーは、若者の仕事ぶりに眼をつけ、月給を人並みに払うことを決めた。

いままでのしょぼくれた収入ではもう仕事をする気はしないと、はっきり言ったからだ。
それに死んだ親父の借金の始末までしなければならなかったので、若者の生活は地獄のようなものだった。

若いオーナーに認められての最初の仕事は高く評価されたために、若者の地位も上がった。

若者はまず、もっとマシなところに移転したいと思った。
今住んでいる屋根裏は汚く不潔で悪臭に満ち、彼自身『貧困の穴ぐら』と呼んでいたほどなのだ。

オーナーが仕事場の近くにさっぱりとした小さなアパートを見つけてくれたので、すぐに引っ越しをすることにした。

若者は猫のヤナーチのことを考えた。

特別の情愛があるわけでもなかったが、彼はいつも人間に対するようにヤナーチと話をしていた。
猫を飼うと言うより、猫という動物の同居人がいるという感覚だった。
ヤナーチもやっぱり、若者を同居人と思っていたにちがいない。

彼はヤナーチを新居に連れて行くことにした。
「お前がその気ならオレと一緒に引っ越ししろ」

荷物を運び出し、アパートを引き上げるとき、
「どうする?ヤナーチ?」
若者は言ったが、猫はのっそりと外へ出て、帰って来なかった。

猫は人よりも家につくか・・・

「このミゼリアの場所が、お前の死ぬまでの縄張りってことか。まあいいさ、しょぼくれヤナーチ。アッディオ!」
若者は暗い階段を軽快に下りて行った。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 23:10 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート/あと70話
ヴォーペと『テーブルの真ん中』(2)

vo2


ロビーはとってもヴォーペが気に入って、自分のベッドで寝かせたいと駄々をこねたため、両親に止めたれて、しぶしぶ納得したくらいでしたので、ヴォーペがまだ帰って来ないと分ったとき、声をあげて泣きました。

「もしかしたら森に帰ってしまったかもしれないよ。もしそうならヴォーペにとって、とてもいいことなんだ」

夫妻は食事が終って、懐中電灯を持って、探しに出かけたり,10軒足らずのご近所に聞きに行ったりしましたが、誰もヴォーペのことは知りませんでした。

マリアさんの膝の上で、泣く泣く寝入ってしまったロビーを、二階の部屋に運びこんだあと、夫妻は暫くの間、テレビを見て過ごしました。もしかしたら、ヴォーペが帰って来るかも知れないと思ったからです。

翌日の朝、最後の星が消えてしまうちょっと前のころ、私は眼がさめました。
そして、ドアのそとで動物のなく気配がしたのです。ちょうど早起きのマリアさんが階段を降りてきたので、台所のドアを開けたときです。
ヴォーヴェが座って彼女を見上げているのでした。

「あらあら、帰って来たのね。一体何処に行ってたの?」
マリアさんはヴォーペを抱き上げて言いました。子キツネはよっぽど疲れていたようでマリアさんの腕の中で寝てしまいました。ロビーが目を覚ましてどんなに喜んだかは想像することも出来ないほどです。

ある夜・・・
もう皆が寝静まった頃、ヴォーぺだけが眼を覚ましてしまい、台所の中を、落ち着かずに歩き回っていました。
ついに棚の上の鍋まで落っことしてしまったので、マリアさんはびっくりして、二階から降りてきました。
ヴォーペはドアの前に座って、女主人の顔をあどけなく見上げています。

「ヴォーペったら、また出て行きたいの? 朝になったら帰ってくるんだよ。ロビーが悲しがるからね」
マリアさんがドアを開けると、ヴォーペはじっとマリアさんの顔を眺めて『ありがとう』というように、クンクンと鼻をならして、真っ暗な中に消えて行きました。

そんなことが、毎夜ではありませんが、ひっきりなしに起こるようになったのです。家族は別に心配はしてないようでした。日中は、全く私たちと変わりない、『いい子』なのですもの。

小さなロビーは、子犬にするように首に皮輪をつけて、散歩に出かけるのが日課になっていました。ヴォーペもあっと言うまに成長していったので、父親のフェデリコさんが、抱いたままで外へ出ることを禁じたからです。
近所の子供達がヴォーペを見に来ることもありました。彼は何処にいっても人気者でした。

でも、私は知っていたのです。そのうち、きっと何かが絶対に起こるってことを・・・

ついにその日が来ました。
ヴォーペが朝帰りして箱の中でいい気持ちで休んでいるとき・・・私たち親子や子犬はもう起きて朝食をとっていました。
いきなり乱暴に車が止まった気配で、マリアさんは外へ飛び出しました。ドアの外には太っちょの男が立っていました。

「まあ、こんなに朝早く何事ですか?」

 男は大声でまくしたてました。
「やっと分ったんだよ。犯人が!」
 男はここから小さな丘をこえたところにある養鶏所の主人なのでした。

「鶏が一匹ずついなくなるのが気が付いたとき、わしは数え間違いかとおもっていた。ところがどうだ。わしの算数が間違っていないことが分ったとき、わしは泥棒を懲らしめてやろうと、昨日は夜中中待機してたんだ。そしたら、なんと、それは人間ではなく、黄色い動物だったんだよ」

「そのキツネは赤い首輪をしていた。首輪をしたキツネもちょっと変だが、絶対に犬でもイノシシでもない、近所に訪ねて歩きまわったら、あんたの所でキツネを飼っているって聞いたんだよ。どこにいるんだ、泥棒キツネは!」

「まだ、寝ていますよ。(朝帰りだったのでね)」

マリアさんはヴォーペの寝ている笹の箱の所に様子を見に行きました。そのとき、ヴォーペは人の声で眼が覚めてしまったのでしょうか。切れ長の眼をウッすらと開けて、ご挨拶をするように蒼い瞳でじっと女主人を見ているのでした。その口元には血の痕がついていました。

                         *

ヴォーペをあれ以来見ることはありません。何処に行ってしまったのでしょうか。
いいえ、どこに連れて行かれたのでしょうか。

幼いロビーは,毎朝目が覚めると、
「ヴォーペ、帰って来た?」と聞くのです。
「ヴォーペはきっとマンマのところに帰っていったんだよ」

数日経ってわたしは4匹の赤ちゃんを産み落としました。
私のようなキジ猫や、真っ黒なのや、毛の色はそれぞれでした。

「ロビーィ、起きておいで、『テーブルの真ん中』の赤ちゃんが生まれたんだよ」
ロビーは、階段を駆け下りてきました。

小さな赤ちゃんが、私のおっぱいを吸ったり、ごそごそ這い回っています。
「あ、このネコ、ヴォーペみたいな色してるね。ボク、ヴォーペって名前つけようかな」
「いいとも」
おとうさんは、ニコニコして答えました。

そして私も数日後には、また、テーブルの真ん中で眠れるようになったのです。(K)


| 猫.cats,gatti 100の足あと | 05:25 │Comments2 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート / あと71話
ヴォーヴと 『テーブルの真ん中』 (1)
volpe 1

わたしの名前は『Centro tavola(テーブルの真ん中)』。

ちゃんと『ミリー』という名前があるのですが、いつのまにやらそう呼ばれるようになったのです。
私は夜眠くなると、台所の大きなテーブルに飛び上がって、その真ん真ん中で寝る習慣があるからです。私の子供達もそうしたくて飛び乗ろうとするのですが、ここの奥さんに許してもらえません。
私だけは特別扱い。きっと、この家の中心的存在、いわば、わたしはもう7才で、母親的、ボス的な存在だから、好きなようにやらせてくれるのでしょう。

お客さんや近所の人達が、夜の更けるのも忘れてテーブルを囲んでワインを飲みながら話し込んだり、トランプに夢中になっていても、眠くなった私は、ひょいと彼らのど真ん中に陣取って横たわります。
客達もみんなそのことは承知で、
「『テーブルの真ん中』が、眠そうだよ、そろそろ引き上げようか」
などと、腰をあげるくらいなのです。でも、今、私は身ごもっていて、上り切るのはちょっと大変なので、誰かが、抱えて上らせてくれます。

この家には私と私の子供2匹の猫の他に、子犬のポトスとフリ兄弟がいます。私は子犬にまで、自分の子供達と分け隔てなくおっぱいを与えていたくらいなのです。

こんな大勢が台所の中を駆け回ったり、戯れたり、たまには喧嘩をしたりするのですから、大変です。
奥さんもさすがに『静かにして!』て叫ぶことも、1日に二度や三度ではありません。
幸いに、このお台所は、見当が付かないくらい大きく、いわゆる『土間』と呼ばれるものでしょうか。
この家の一階は、殆ど台所で占められているのです。赤い素焼きの床は、夏はひんやりとして、冬は大きな暖炉が暖めてくれて、とてもしのぎやすいのです。その一角、わりと暖炉に近い所に、笹の寝床があります。

夜は、ちゃんと9時頃には、規則正しく子供達は笹の中で床につきます。
寝床は1メートル平方もある四角で、柔らかい麻布が敷き詰められていて、その上で『雑こ寝』というわけです。みんな仲良く、体をくっつけあって・・・これでお分かりでしょう。ボス的存在の私は、寝る時くらい一人でのうのうとしたい気分になることを。

この家族は、製麦工場で働いているフェデリコさんと、奥さんのマリアさんと、5才になる男の子、ロビーこと金髪の巻き毛のロベルトのたった3人だけです。
こんな大きな家は勿体ない感じだけど、だからこそ、動物をいっぱい飼いたくなるんでしょうね。

フェデリコさんも奥さんもロビーも大変な動物好きなのです。動物なら何でも飼いたいって感じ。
もちろん、カナリアや亀や金魚も飼っています。


夏もほど遠くないある午後のことでした。
車の止まる音がしたので、マリアさんが外へ出てみると、遠縁のおじさんが小型トラックから降りてくるところでした。迎えに出たマリアさんに、彼は両腕に抱えている小さな動物を見せました。その生き物は死んだようにだらんとしていましたが、私が今までに見たこともない姿をしていました。
犬とも猫とも違っていて、黄色くて鼻が少々とんがってて、耳がとっても大きいのです。

「丘の雑木林で見つけたんだよ。ほら、怪我をしてるんだ」
 ニーノおじさんは家の中に入り、テーブルの上に横たえました。
「この子狐は、きっと森の中を迷っているときに撃たれてしまったんだよ。後ろ足をやられているみたいだが、弾はそれている。マリア、傷の手当を頼むよ。狐なんか持って帰ると、女房から離縁を迫られそうだもの」
ニーノおじさんは、笑いながらそう言って車に乗り込みました。

子狐は回復するまで、別の小さな籠の中に寝かせられて家族に大切に育てられました。
そして一週間後には、とっても元気になりました。
彼は家族からヴォーペと呼ばれるようになったのです。
小さなロビーがヴォルペ(狐)と正確に発音出来なくて、ヴォーペ、ヴォーペと呼んでいるので、そのまま名前になったのです。

「さあ、ヴォーペもすっかり元気になったのだから、今夜から仲間と一緒に寝るんだよ」
マリアさんに大きな籠の中に寝かされると、ヴォーペは聞き分けよくそのまますやすや寝てしまいました。

ヴォーペは連れて来られた時は、ほんの小狐だったのに、だんだん大きくなっていきます。彼はロビーのお気に入りで、ロビーが保育園から戻ってくると、さっそく『ヴォーペはどこ?』って開口一番聞くのです。
ヴォーペは本当にいい子で可愛らしいので、近所の人の間でも人気者でした。顔がほっそりして痩せ形で尻尾が長くてふっくらして、先っちょが白いのです。オレンジ色のつぶらな瞳の可愛らしさといったらありません

眠くなって閉じた瞼は愛らしく綺麗で、ヴォーペを好きになれない者なんて考えられないほどなのです。与えられた物は、何でも食べるのですから、世話の掛からない子ねって、マリアさんも喜んでいました。

 そのヴォーペが・・・
 夕暮れになっても、帰って来ないことがあったのです。ちょうど、食事時で、外は暗くなりつつある頃でした。家族も私たちも、全員土間にいたのでしたが、二階から降りてきたロビーが、お気に入りのヴォーピがいないことに気が付いたのです。
「パパ、ヴォーペは何処?」(つづく)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 21:48 │Comments0 | Trackbacks0編集

Alice(アリーチェ)とオリーヴ
alice
食いしん坊!
自己流イタリアン。
まだ、お腹すいてませんか?


この春スペイン南部のマラガ一帯を旅行したとき、一ばん美味しかったのが、このアリーチェのオイルとレモン漬けでした。アリーチェはアンチョピのことです。

この愛らしい名前は「不思議な国のアリス」のアリスと同じ名前、つまり、アリスのことをイタリアではアリーチェと呼ばれていて、この名前のイタリア女性は結構います。


さて、このアリーチェですが、どの店でも盛りつけは全く同じでしたから、伝統的なものなのでしょう。
一盛り、6~7ユーロくらい。

とろけるような舌鼓、生ビール、爽やかな潮風を肌に感じながら、行き来する人々を飽きることなく眺める・・・夕食前の解放されたひと時、そのうちお腹も空いてきます。
7時くらいになると、バールはレストランとしても活動し、旅行者や現地の人々でいっぱいになります。(K)

| けんじの自己流イタリアングルメ | 06:06 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート あと73編

老人と猫
luccio


その1『十字架ミギイとルッチョじいさん』

悦子さんは、家中を、さては窓から顔を出して叫んでいる。
「ミギィ!ミギィちゃん何処?ご飯が出来たのよ~」

眠気眼でキッチンに入って来た夫に、悦子さんは開口一番、
「大変!ミギィがいなくなったのよ。どうしよう」

「また、ルッチョ爺さんのところに、時間つぶしに行ってンじゃあないのかい?」
「あたしもそう思って行ってみたら、おじいちゃん留守みたいだったわ」

「こんな朝早くから?それじゃあ、ミギィを連れてお散歩かな?」
「冗談はやめて。おじいちゃんはミギィが大嫌いなこと、あなたよく知ってるでしょ」

お隣のルッチョおじいちゃんは、ミギィを嫌っている。いや、ミギィだけではない、何もかも嫌っている。
偏屈でときどき奇妙なこともしたりする。いつも怒ったような、絶望したような血の気のない表情、人と目が合っても知らん顔をする。

6ヶ月前まではそんなおじいちゃんではなかった。
近所でも評判の温厚な老人だったのだ。
最愛の奥さんが急死するまでは・・・・

ある朝目が覚めると、横に寝ていた奥さんが亡くなっていた。
あれ以来、おじいちゃんはすっかり人が変わってしまった。

        *

出かけていたルッチョ老人は、午後戻って来た。
車をガレージに入れる音を聞くと、待ってましたとばかり悦子さんは、窓から身を乗り出して声をかけた。
「ルッチョさ~ん。うちのミギイを見かけませんでしたァ?」

すると、おじいちゃんは、天地がひっくりかえるようなことを言ったのだ。

「ミギイ?わしはあの猫を捨てに行って、今、帰って来たばかりなんじゃよ。我が家に不幸をもたらした呪わしい猫なんでな」

そして老人はこんなことも言った。
「あんたのご自慢の猫の額の十字架に、悪魔の加護が本当にあるのか、わしは見たいんでな。あるならいずれ戻ってくるだろうよ」
意地悪い笑いを浮かべて爺さんは家のドアをバタン!と閉めてしまった。

雄猫のミギィは、普通の赤いトラ猫だが、額の上に白い十字の印があった。
珍しいので、聞きつけてわざわざ見に来る人もいたくらいだ。
地方新聞に載ったこともある。

ルッチョ爺さんの奥さんのベラさんも生前、ミギィをとっても可愛がっていた。
そして自分達の家にも自由に入らせていた。もともと動物には関心がなかったルッチョ老人だったが、愛妻の好きなようにさせていた。

ある朝、ルッチョ老人が眼を覚ますと、隣に寝ているおばあちゃんの枕元にミギィが行儀よくい座りして、おじいちゃんを見ていたのだった。
そしておばあちゃんは死んでいた。

ミギィはおばあちゃんの最期を見取ったのだと、葬儀に訪れた人達は言ってたが・・・

以来、おじいちゃんはミギィのことを憎むようになった。
元気だった最愛の妻に死を運んだのはミギィなのだ、などと考えたからだ。
何度殺してしまおうと思ったかも知れない。

こんな悲しい出来事から、おじいちゃんは世捨て人になってしまった。

「ルッチョさんが、ミギイを捨てに行ったんだって!」
悦子さんは、夫が務めから帰ってくるなりわっと泣きふした。

「それは、穏やかではないな」
夫は悦子さんを抱き寄せた。
「さあ、エツコ、元気をだして。きっと無事に戻って来るよ。神様のご加護を受けてる猫だって、君、いつも言ってただろ?」
警察に訴えるワ、と泣き続ける悦子さんを「しばらく様子をみるんだ」と、たしなめた。
         *

さて、トラ猫のミギイは、海と反対側の山の奥に捨てられた。
ルッチョじいさんの車がでこぼこの山道に消えてなくなるまで、ぼんやりと見送っていたが、やがて、海の匂いのするほうへと歩きはじめた。

途中で民家にたどり着いた。
お腹が空いていたので、ミャオと泣いたら、おかみさんがご飯をくれた。

「あらっ、この猫、額に十字の印があるわ」
信仰深いおくさんは、美味しいものを沢山食べさせてくれた。

旦那さんも子供たちもミギィを可愛がってくれた。
「お前がその気なら、いつまでもここにいてもいいのよ」

ミギィはお腹がいっぱいになると、庭のオリーブの木の下で一眠りしたりして過ごした。
2、3日そこに留まったが、朝早く、また海の匂いを嗅ぎわけながら歩いて行った。

          *

ルッチョ老人はその夜,初めて愛妻の夢を見た。
どんなに会いたくても,今まで夢の中に、奥さんが一度も出て来てくれなかったのだが。

「ベラかい?会いたかったよ」
ルッチョ爺さんは言った。

ベラさんは泣いていた。
「ベラ、私に会えて嬉しくはないのかい?」
「あなた、何てことなさったの?ミギィを捨てに行くなんて。ミギイは私の最期を見取ってくれたのよ」

眼がさめたとき、おじいちゃんの眼から涙が溢れた。
明け方、さっそく山の奥の方まで行ってみたが、ミギイを見つけることはできなかった。

          *

ミギイは2日もかかってやっと海辺に出た。

海に面した崖っぷちに小さな飲食店があって、沢山の猫がいた。
給仕男はミギィにもご飯をくれた。
「奥さん、この猫の額に白い十字架の印が」
「ほんと。珍しいわねえ。それに、きれいな首輪もつけている。きっと飼い主がいるのね。お品もいいわ」
奥さんはミギィを抱き上げながら言った。

「さらわれたのを逃げてきたのかしら?飼い主がきっと探してるわよ」

翌日、外のテーブルで一服していたトラックの運転手がミギィを見て言った。
「まてよ。十字架の印の猫のこと、聞いたことがあるぞ。この州の外れの街だったな、たしか」
トラックの運転手は全国を回っていたから、いろんな情報を知っていた。

「じゃあ、あんたそっちの方に行くんだったら、連れてってあげて」
「OK!」
店の奥さんが貸してくれた籠の中にいれると、助手席に乗せて、運ちゃんは鼻歌を歌いながら走りだした。

日もそろそろ沈みかけた頃、
「さて,着いたぞ。この街にお前の家があるといいんだけどね」
トラックのドアを開けると、ミギィはためらいもなく外へ飛び出した。

あたりをょろきょろ見回していたが、どの方角に行けばいいのか理解したようだった。
ちらっと運転手をみやってから歩き出し、街角に姿を消した。
「やっぱりお前は自分の家が分ってるんだな」

ミギイはなんの苦労もなく、我が家とおじいちゃんの家の前に辿りついた。
まずはと、おじいちゃんの家の庭に入って、赤煉瓦の建物の窓枠に飛び乗った。中を覗くと、おじいちゃんの寝ている青白い姿が見えた。
哀しそうなおじいちゃんの寝姿を見て、ミギィは、ミャーオと小さく泣いた。

                   *

悦子さんはしょげ返って、食事も喉に通らない。
「さあ,元気を出すんだ。きっと戻って来るよ」
夫は慰める。
「昨日、爺さんをちらっと見たけど,何だか随分しょげてたなあ。後悔してるんかも知れんぞ。彼の大好物の卵焼きを作って,ご機嫌伺いに行ってきたら?」

悦子さんは信じられないというふうに夫の顔を見た。
「あなた、少しおかしいんじゃあない?あの憎むべきおじいさんに卵焼き作って持って行けだなんて」

おじいちゃんが独りになってから、卵焼き持って行ったこともあるけど、お礼のひと言も言われたことがなかった。
(そのくせ、卵焼きはちゃんと食べてしまっていたけど)

悦子さんは卵焼きを作った。
そして、おじいちゃんの家のドアを乱暴に叩いて言った。
「卵焼きもってきましたわ。ドアの下に置いとくから、フンズケないで!」

悦子さんがまだ言い終わらぬうちに、そっとドアが開いた。
老人は人差し指を口にあてて、しーっと言う仕草をすると、悦子さんの腕をつかみ、奥の方へと導いて行った。

おじいちゃんのベッドの足許で、疲れたミギイがまんまるになって眠っていた。(K)


| 猫.cats,gatti 100の足あと | 09:26 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート  あと72話
老人と猫 2
下意味

『カイミおじいちゃんとカロータ』

壁一つ向こうに住んでいるカイミ氏はいたって愛想が悪い。
顔面蒼白な面は品は悪くない。が、いつも縦じわを寄せていて、縁なし眼鏡の奥の透明な瞳が、めっぽう冷たい。こっちの顔を見ないふりをするし、挨拶しても言葉が返ってくることもない。

我が家の猫、カロータがこともあろうにカイミ家の半開きのドアからするりと入ってしまったことがあった。
蒼くなってドアの外から、
「カロータァ、出ておいで!」と叫んでいると、カイミ氏が猫の首の後ろをひっつかんで出て来て、ポーンと乱暴に投げ出し、ドアをバタン!と閉めてしまった。
何てことを、これでも生き物なんですよ!

ところがである。
カロータの奴、性懲りもなくまたまた、カイミ家に入ってしまったのだ。
こんな無愛想な爺さん(婆さんもいることは知っている)の家のどこがいいのだろう?
ネコの魂の状態ってどうなってるんだろうかね?

今度はしーッしーッと靴で乱暴に外に追い払い、こっちが「すみません」と謝ってるのに、無言をつらぬいて階段を降りて行ってしまった。
       
                   *

ブザーが鳴ったので開けると、中年のほっそりした眼鏡の男性が立っている。
「わたしは隣のカイミ家の息子です。もし大きめのフォーンがあったら、貸していただけないでしょうか?」
カイミ爺さんの若いときそのままを思わせる息子さんは丁重に言った。
息子のほうは、いたって行儀よく感じも悪くない。

病身の母親の体を洗ったあと、すばやく乾かすために2つフォーンが必要なのだと言う。
大きいフォーンを持っていたので渡すと、
「ああ、これで結構です。暫く拝借いたします」

それから十日たらず経って、表門に『葬儀報告』が張り出してあるのでよく見たら、なんとカイミ夫人が亡くなったのである。

壁一つの近隣なのだから、お悔やみに行かないと・・・いや行くべきではなかろうかと迷った。
だが、あの偏屈爺さんにお悔やみの挨拶をしなければならないと思うとユウウツになる。
お悔やみをイタリア語で言うのだって、日常あまり使わない言葉だし、くりかえして言ってみても、実感が湧かない。
日本でだって,お悔やみに行った経験など殆どないのだから。

それでも大決心して、ベルを鳴らしたら大勢の先客が帰るところだった。

先日フォーンを借りに来た息子さんが、『どうぞ、どうぞ。見てやってくださいな』と言ってボクを寝室に導いた。
「親父はサロンで休んでいますんで失礼させて頂きます」と息子さん。
ホッ、やれやれ。

カイミ夫人は癌にかかって、13年の闘病生活を送ったという。
その看護につくしたおじいちゃん。大変だったらしい。
顔によく現れていたな。

ベッドの上に普段着のワンピースを来て、お昼寝でもしているかのような亡きカイミ見夫人。
痩せて、鉛の人形のようだ。
         
カイミ氏は葬儀が終って、しばらくの間、息子さん家族の家に引き取られたようで、ドアは長いこと閉っていた。
カロータがドアの外にじっと座っているのが、何となく哀れ。
ジジイに嫌われても、なおなお情愛?を示す猫の気持ち、さっぱりわからん、繰り返すけど。
       
                   *

数ヶ月も経った頃だが、ブザーが鳴ったのでドアを開けると、小柄な上品な老紳士が微笑んで立っている。うちのカロータを両腕に抱いているその人こそ、以外!カイミ氏なのであった。

「お宅の猫ちゃんはよっぽど我が家が気にいったと見えますな」
カイミおじいちゃんは笑顔で言った。

彼は猫を床に降ろした。
カロータは逃げようともせず、足許でおすわりしたままだ。
「お腹が空いていたようなので、生ハムをやりましたよ」

カイミ氏は昨日パドヴァの次男の家から戻って来たのだと言った。
「今朝は知人とヴィジェヴァノに靴を買いにいったのですよ。あそこは安いし良いものがあってね。2足も買ったんです」
そしてちょっと自慢気に新品の自分の足もとを指さすカイミ氏。

このおじいちゃん、しばらく見ない間に随分変わったなあ。
いくらかふっくらして、目つきも陰気なところがない。

『おふくろが癌になってから、親父もすっかり人が変わってしまったんですよ。13年間の看病でくたくたに疲れてしまったようです』
お悔やみに行ったときの、息子さんの言葉。

なるほど、長い看護も終わり、肩の荷が降りてほっとしたってわけか。
そしてその苦労は今から報いられるわけだ。


ぽかぽかと暖かくなってくると、カイミ氏はたびたびドアを半開きにすることがあった。
するとまたカロータが忍び込む。
「すみませんね。いつもご迷惑かけて。おい、カロータ、ここはお前の家ではないんだ。さ、帰ろう」
「まあ、いいじゃないですか。よっぽどここが気になると見えますな」
カイミ氏は、自分のスリッパに鼻を付けて臭いを嗅いでいるカロータを高々と抱き上げた。(K)





| 猫.cats,gatti 100の足あと | 09:42 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫・ショートショート  あと74編

ritratto


『華麗なる肖像画』

高名な肖像画家のアトリエへ、ある裕福なご婦人が訪ねてきた。

「マエストロ、あたくしの肖像をお願いしたくて参りましたの」

画家は一目で、この妙麗な女性に惹かれ、即座にOKした。

「ありがとうございます。でも、完成の日時は守っていただきたいのです。一ヶ月後に私の40才の誕生日ですの。肖像画をお客様にご披露したいのですが、大丈夫でしょうか?」

この婦人は画家がいくらか気紛れなところがあると聞いていた。
ときどき突拍子もないことをしたり、何年も遅れて仕上げたりする変わり者としても有名だが、ヨーロッパの王室のプリンセスの肖像画も頼まれるほどの人だったから、婦人は『どうしてもこの画家に』と決めたのだった。

画家が承諾してくれたので夫人は有頂天になった。
仕事始めの日などを打ち合わせを終えると、彼女は大満足で帰って行った。

約束の第1日、リタ夫人は一匹のグレーの美しい子犬を伴って現れた。
ミンクのコートを脱ぐと、スミレ色のドレスの艶かしい姿態が披露され、画家はますます描く気いっぱいになった。
すでにセットされていた豪奢なルイ14世スタイルの椅子に、婦人と子犬がポーズをとろうとした。

画家は以外という表情で不機嫌に言った。
「奥さん、契約では子犬のことは何も話がなかったと思いますがね」

「分ってますわ。わたくしそのことを申し上げるのをつい忘れていましたの。このイヌは私の分身のようなものですの。お金はいくらでも払いますから、ぜひ、お願いいたしますわ」

熱心に言われて、画家はしぶしぶOKした。
夫人は子犬に言った。
「さあ,お前の一ばん得意なポーズをとってごらん」

子犬は夫人の足許で、両足を揃えて前に投出し、首をちょっと反らせ、見事なフォームを作った。

さて、仕事が始ったが、リタ夫人は一切愚痴をこぼさず辛抱強かったので、画家は思う存分熱中することができた。
驚くことに、足許の子犬まで、じっと同じポーズでを続け、ゆらりともしなかった。
婦人がたまに軽くアクビをして「失礼」と詫びると、子犬もちょっとあくびをして小さく「キャン」と鳴いた。

このような日々が続き、完成まであと僅かになった。婦人も子犬もモデルとして完璧にこなした。

ときどき婦人は作業の途中で、絵を見たがったが、画家はそれを断った。
「私は、完成するまで絶対に見せない主義なのです」

誕生日の前日に絵は完成した。
そのとき、婦人ははじめて画家の方に回って、自分の肖像画を見たのだった。

そっくり、そのままでありながら、その気品と官能美に、夫人は、いたく感動した。

行儀よく一緒に眺めていた子犬が、そのとき、「グゥゥッー」と唸った。
そして、歯をむき出して吠えた。
夫人がいままで聞いたこともない、激しい吠え声だった。子犬は絵の中の自分に向かって、牙をむき出して吠えてるのだった。

夫人ははっと息をのんだ。足もとに描かれたのは彼女のイヌではなく、灰色の猫だったのだ。

「毛の色とこのポーズでは、猫のほうが相応しいと思いましてな」
画家はこともなげに言った。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 12:05 │Comments1 | Trackbacks0編集

ウインドウ物語 その2
玩具屋の聖人たち
SANTI 2

SANTI

やはりトーレモリノスの、広場からちょっと入ったところに、この店はあった。

玩具屋でありながら、ウインドウを独占しているのは、何と聖人たちだったのだ。
そこを通ったのが朝早くか、夜は閉店後だったので、店の中に入るチャンスはなかったが、ガラスのドア越しに覗いてみたかぎり、確かにフツウの玩具屋だった。

ウインドウはドラマチックな照明が施され、宗教的雰囲気をかもし出している。

アヴィラの聖テレーザや、マラガの保護者、聖ミグエルらしきもの、セヴィリアの宗教行列の人形もある。
こういうリアリズムが僕は大好きだ。

友人(イタリア人)は、ぼそっとつぶやいた。
「Superstizione・・・」
Superstizioneとは、迷信とか誤った教理の信奉などと解釈出来る言葉だ。
距離を置いて,やや白けた気分でつぶやく、典型的北イタリア男。

南スペインでは、これまでにもたくさんの聖人像にめぐり合った。
まばゆいばかりの超絢爛豪華な嘆きの聖母マリア。
涙はダイヤで作られていて、マントは宝石が埋め込まれ金銀で刺繍されたどっしりとした緞子(どんす)であった。

人々は不幸や災いから保護されることを願望し、多くの聖人像を作って、祈った。

玩具屋さんのウインドウに戻ろう。
飴屋さんのウインドウでもそうだったが、徹底したディスプレイ魂には驚嘆してしまう。
商魂逞しい、などを通り越している。
これでもか、これでもかっていうしつこさ。
そして、ぎりぎりの所でストップしている感性は見事だ。

じつは、これがスペイン人の本質?・・・と旅行中感じることがたまにある。
イタリア人とスペイン人は同じようだが,実は違うんだ。

隅っこのほうに肩身の狭い思いをしながら、アニメ人形や、モデルカーなどが飾ってあったのが、なぜかホッとさせた。(K)

| 小説とエッセイ | 19:27 │Comments0 | Trackbacks0編集

ウインドウ物語 その1
飴屋さん

AMEYA

灼熱の太陽から避難して、一歩,ひんやりとした路地に入ると、こんな店が。

もしかしたら紺碧の空とうまく溶け合う色とはこんな色?

白壁の白?、ピンクの野のバラ?、野いちごの赤?カナリアのイエロー?

完璧なハーモニーは、通り過ぎる人々に頬笑みかける。
ここを見過ごして行く人たちっているのかな?

マラガ市から6キロの街、トーレモりノスという小さな観光地の石畳の坂道。

ありきたりの観光客向けの店が左右に乱立する中に、この飴屋さん。
ここだけは違う。

アンデルセンや、グリムのかわいい主人公たち。

それともエドモンド・ドゥラックの絵から紛れ込んできた妖精たち?

彼らは、顔を覗かせ、悪戯っぽくウインクする。
そして腕をくんでやさしく歌い、問いかける。

みなさん、甘い甘いアメはいかが?(K)

| 小説とエッセイ | 17:00 │Comments0 | Trackbacks0編集

バカラーの野菜煮込み

BACCARA
食いしん坊、自己流イタリアンです。
まだ、おなか空いてませんか?

塩付けにした鱈(たら)のことをバカラーと呼ばれています。
鱈で思い出すのは、ポルトガルを旅行していたときのことですが、今、思い出すには鱈をフライにしたようなものが多く、重すぎて、自分の口には合わなかった記憶があります。

ここに紹介するバカラーの料理は、ミラノの知人の家でご馳走になったもので、「おいしいねえ。これどういう風に作るの?」って聞いたら、こうしてこうしてこう、簡単だから,やってみたら?といわれて作ったら、最初からまあまあの出来で、以来、ときどきお客さんが来られるとやります。

塩付けの鱈の塩を除くのに、2日くらいかかります。
3日くらいたっぷりと水を替えると、塩っけがまったく取れてしまって、塩っけファンの自分としては、ちょっと物足りない感じなので2日くらい。

さて、フライパンにオリーブ油をたっぷり入れて、みじん切りのたまねぎを、とろ火で時間をかけて炒めます。これは、イタリア料理の煮物では、基本的なことです。まずそれを準備していろんなことが始まるって感じです。
この料理には、最初からにんにく、黒オリーブも加えて炒めます。

たまねぎが黄金色に、又は透明に煮詰まったら、にんじん、セーダノ(セロリ)、ピーマン、トマトを加えて煮詰めます。最後にジャガイモです。

ジャガイモがほとんど煮詰まったところで、バカラーを加え、白ワインで整えて、蓋をして煮ますが、煮すぎないこと。これで、出来上がりです。(K)



| けんじの自己流イタリアングルメ | 06:00 │Comments6 | Trackbacks0編集

なまなましい生肉の思い出
namaniku.jpg
イタリアでは生肉を前菜で食べる。
日本人が刺身や寿司を頻繁に食べるほどとは思えないけど、とにかく当たり前の食べ物なのだ。
「今夜は生肉かい?たまにはいいな」って感じなのだ。

さて、食べ方は・・・・
一つはカルパッチョと呼ばれるもので、生ハムのように薄くスライスしたものの上に野菜のルーコラや薄く削ったパルミッジアーノをあしらい、レモンとオリーブ油をかけて食べる。
これは僕も大好きだ。イタリアに来てかなり早く慣れた。見掛けも悪くないし、抵抗なく馴染んだ気がする。やっぱり眺めた印象って大切。

もう一つはひき肉の生を食べる。
これは日本人にとってけったいなものに違いない。
これに馴染むために、何とボクは25年もかかったのだ。
ボクも若かったし、何でも食べてやろーって、冒険心もあったけど、やはり勇気のあることだった。見た目もちょっとグロだ。
  

生肉の始めての経験・・・食べなかったけど。
ちょっと古い話になってしまうけど、1970年の初期のこと。

日本からミラノに着いて、すでに見つけてもらっていた場末のペンションに入ったのだったが・・・
 普通のアパートをそのままペンションにしたものだったが、入居人は男ばかり5人。ポスティーノ(郵便配達夫)、クラブで歌っているという長髪の流行歌手、ナポリ大学を停学して働きに来ている学生、それと失業中のシチリア人、そしてボク。

ペンションのオーナーは100パーセント南部の女性で「ベンツィ夫人」と皆が呼んでいた。
何やら車のような名前の彼女は、小柄な男性入居人たちよりも大柄で、色が黒くどこか動物的な印象。

ベンツ夫人は、たまに下宿人を夕食に招待することがあった。

初めて呼ばれたとき。
ジャーン!
奇妙な物がでてきたのだ。
これ,一体なに?
「生肉よ!おいしいわよーっ!」
「うまいぞ!ベンツィさんの生肉は特別なんだ」
と言っても,別にベンツィ夫人の贅肉を食べるわけではない。

小鉢にねちゃっとしたけったいな物が入っている。これが生肉。
ニンニク,トマトケチャップなどなどがミックスされているんだそうな。
彼女はその中に、レモンを加えようとしていた。

レモンをポンっと真っぷたつに切ると,一つを口に。
これ以上健康な歯はあるまいと思われるようなまっ白な(そして大きな)歯で,ジューっと汁を絞り出した。汁は一滴も無駄なく小鉢の中へ。
ますます動物的だ。
レモンって、手で絞るもんだと思っていたんだけどね。
それをまた,スプーンで丹念に混ぜて出来上がり。
そして、食べろ,食べろと進めるのだ。
どうしても,食べられない。
「日本人は魚を生で食べるのに、生の肉が食べられないって、変じゃないか」
結局その夕食では生肉はご辞退した。胃が『入れないでくれー』って叫び続けてるんだもの。

ベンツ夫人は食事中赤ワインをがぶがぶ飲み、若い男達に囲まれて上機嫌。
そして、上気したうつろな目でジーッとボクを見ながら、
「日本ってどこにあるの?アフリカの近く?」などと聞くのだ。

「わたしは若い頃、スカラ座のコーラスにいた」
食事中、いきなり彼女がしんみりとした調子で言い、『恋は野の鳥、〜〜〜』などと急に歌い出したりした。

そのペンション、半年経って出て行ったけど、ボクのイタリア生活の出発点だったのだ。40年近くも経って、たまに思い出すこの頃。
場末のペンション、ベンツィ夫人、生肉とハバネラ・・・

         *

数年経って、あるデザイナーと親交があり、夕食に招待された。
テーブルについたとき、彼は女房に言った。
「あれっ!生肉をこいつ(ボク)に食わせることにしてたんだろ?」
ボクが生肉恐怖症ってこと、彼は知ってたから、特上の生肉をボクに食わせたかったってわけ。しぶしぶご招待を受けたボク。

「今日は仕事が遅くなったので、あの肉屋さんには行けなかったの。冷蔵庫にあるけど、生で食べるにはもう古いわ。だからこの次にね」
職業婦人の奥さんはすまなさそうに言った。
テーブルの上には、美味しそうな料理がいっぱいある。なんで、生肉を食う必要があるのかね?と、ボクはほっとする。

友人は冷蔵庫の中をごそごそやっていたけど、生肉を見つけ出し、クンクンやっていたけど、
「全然,悪くなってないじゃーんか」
「ねえ、あなた、火を通しなさい。間違いないから」
彼はそれには耳を傾けず、挽き肉を小鉢に入れて、ベンツ夫人がやってたように、色々な物を混ぜて、こねまわしている。


「お前も食べて見るかい?美味いぞォ」
と、ボクに進めようとしたときだ。
女房はボクの腕をがしっとつかんで,哀願するように言ったのだ。

止めなさい、食べないで!私は生肉は肉屋でミンチしてもらったその日にしか食べないの。バカな亭主が食べるのは彼の勝手だけど、お客さんには絶対進められないわ」

数日経って彼の事務所に電話したら・・・
ショック!
生肉を食べてあったと言うのだ。
生肉には眼のない彼が、女房の忠告を聞かずに食べたのでバチがあたったのである。「あの夜からすごい下痢と発熱が続き、私は一睡もせず看病だったの。医者をよぶやら、もう,大変だったわ」
と,電話口でまくしたてる女房。そして最後に、
「あんたに食べさせなかったことが、せめての慰めだわ」
と、しみじみ言ってくれた。

戦後の食料事情最悪のときに育った僕には、挽き肉のイメージはあまり上等なものではない。何か余計な物まで混ぜてひいてあるのではないかという疑いが絶えず頭の何処かにあった。そんな不信感の伴う挽肉を使った、まあ好きな食べ物といえば、せめてお袋が作ってくれたジャガイモがたっぷり入った揚げたてのコロッケとか、オムレツくらいだったのだ。
 だから、そんなべちゃべちゃした生肉食うなんて、飛んでもないことだった。

ま!そんなこともあって、「絶対ひき肉は食わないぞーっ。一生食わないぞーっ」って天に誓ったボクではあったが。
こうも長いことイタリアにいると、『郷にはいれば何とか・・・』でいつの間にか馴染んで来るものである。


『美味しいわよ。片意地張らないで食べてみなさいよ
などと、やんわり言われると、『ノー!』と押し通す勇気がなくて食べてしまう。そしていつの間にか、平気で食べられるようになったというのが事実。

「要は信頼だよ。ちゃんとした肉屋で生肉用を買い、その日のうちに食べてしまえば、全く問題はないんだから。君ね、刺身と同じなんだよ
などと、この頃は日本から来る友達にしたり顔で言って、何とか食わせようとする自分。

ごく最近、ちょっと洒落たレストランで昼を食べたときのことだ。
その日は祭日で、予約制の一律メニューであったが、前菜のトップに生のひき肉が出て来たのである。ちょうど握り寿司くらいの大きさと形で、大きな金縁の皿の真ん中にちょこんと一つだけ乗っかったものだった。
淡いピンク色だったから子牛の肉かもしれないが、鮮やかな色からしてテーブルに出す直前にひいたことは間違いない。

 口の中で、微かに広がるレモンとショウガのハーモニー!
僕の知らない薬草も入っているのかもしれない。これほど生肉をうまいと感じたのはイタリアに来て初めてのことだったし、その日、六皿も出て来た前菜の中でもトップに掲げたいものであった。(K)

| けんじの自己流イタリアングルメ | 17:09 │Comments3 | Trackbacks0編集

生肉
namani
食いしん坊、自己流イタリアンです。
まだ、おなか空いてませんか?

暑さも日ごとに増してきた今日この頃。
ひんやりとした生肉はいかがですか?
ギョッ!そんな!

生肉は基本的に2種類の食べ方があるようです。
ひとつはカルパッチョ(薄くスライスしたもの)で、ルーコラやパルミジャーノの削ったものを加えて食べるもので、もうひとつは写真のようにずばり、ひき肉のナマ

日本からお客さんが見えても、無理に進められないのが、この生肉です。
強引に進めて、もし何かあったら・・・・って不安があるからです。
こんなにおいしいものなのにィってわけですが、実を言うと生肉が’食べられるようになるまでに、
20年の歳月があったのですから、やっぱり無理には進められませんね。

、食べ方は、トマトケチャップやレモンン生卵を加えて、塩、故障して味わうのが、一般的のようですが、
これでは肉が変色し、食欲も進まなくなります。
レストランでこの頃盛んに出るようになったのですが、ほんのショウガや、薬草の風味を加えた、シンプルなものが多いようです。客の注文に応じてミンチする。それもミンチの器械で引くのではなく、細かく包丁で切る・・・のが最高と言われてます。

イタリアに来たときは試してみてください。
写真の野菜はバルコニーに伸び放題の青シソです。この取り合わせは最高でした。

「生肉」の生々しいエッセイに関心あるかたは、「食のエッセイを訪問してください。

| けんじの自己流イタリアングルメ | 11:36 │Comments0 | Trackbacks0編集

アンダルシアのたち
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スペインの朝は遅い。
ここは観光地だから,特にそうなのかもしれない。
七時半起床。海岸ぞいのホテルをこっそりと抜け出す。小さな宿だ。
土産店やバールなどが連立している石畳を踏みながら、眠気眼でのろのろと道を上って行く。
いきなり、坂道の上の方から、シューッと奇妙な音が。水をまく音だ。

こんなに早く起きているのは、ボクだけではなかったってことか。
グリーンカラーのストライプの作業服を着た,一見消防夫のような清掃夫達が現れる。
彼らは太いホースをあやつりながら、強烈なシャワーを隅々まで念入りにまき散らしている。

水は汚れと一緒に心地よい音を立てて流れていく。
彼らが去った後の、ひんやりとした濡れた石畳。サンダルを脱いで、素足で歩きたいほどだ。
一日が始まろうとしているつかの間の静寂。
再び広場に向かって、これ以上は無理と思うくらいゆっくりと上って行く。

一匹の赤猫が現れる。
猫はボクをちらっと見たようだが、そのまま上の広場へと向かって 、急ぎ足で歩いて行く。
朝っぱらから,そんなに急な用事があるのかね?

坂を上りきって広場に出る。夜遅くまで旅行者や地元の人たちで賑わう街の中心地である。
昨夜はメキシコ人の音楽グループが、どえらく人気を呼んでいた。
多くのツーリストが取り囲んで聞き入っていた。

ボクらは夕食の後、いつものように、ブルガーキングでコーヒーを飲んでいた。
いろいろ試してみたが,ここのアメリカンコーヒーがいちばん口に合ってることを確認したからだ。
しかも安い。

赤猫は姿を消してしまって残念。以前飼っていた猫が赤い虎ネコだったので、どこにいっても、いちばん気になるのが赤い猫なのだ。

また別のネコが・・・・白にクロのぶち。蒼いガラスの眼。無人と化したブルガーキングのテーブルの下に潜り来んでしまったが、何とかパチり!

そうなのだ。早起きのネコ達は、人間どもがまだベッドの中で、目覚めの余韻を楽しんでいる時に、早々と寝床から出てくるのだ。
騒がしい人間どもがまだまだ起きてこない朝。水を打たれたばかりのひんやりした石畳。
この時刻こそ、猫達の時間なのである。

灼熱の南国の太陽は、ネコ族にも苦手らしい。
この数日間、日中必ずカメラをぶらつかせて歩いたが,街中で、一匹もお目にかからなかった。

「朝早くだったら、猫歩いてるかも知れないね」
ホテルのマネージャーがそう言ってくれた。

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Ag3

朝早く海岸づたいにも歩いてみた。
いたいた。
水をひかれてエメラルドに輝く芝生。公園の中を朝の散歩をしていた。
白と薄茶の斑の、魂を奪われてしまうほどの美しい猫だった。
2メートルくらい近づくことが出来たがそれ以上は無理、また5メートルくらい差がつけられた。
済んだ空気と波しぶきの音とかすかな木々のこすれ合う初夏の朝のハーモニー。

太陽は強いが,この一帯の海岸の水は想像していたよりもずっとずっと冷たい。
だから、水に飛び込むには、かなりの覚悟と勇気がいる。
とは言え日中、素足で砂浜を歩くことは不可能なほどだ。
                      *
海岸通りが急カーブしていて反対側が裸の崖になっている所に猫が7、8匹見つけた。
太陽が移動して崖が陰になると、猫達は現れる。午後5時頃そこを通ると必ずいた。
横に水やアイスクリーム、飴などを売っている小ちゃな売店があり、店の夫婦がエサを与えているとのこと。狭い店の中に入って行って、奥さんに怒られている厚かましいのもいる。
黒猫が多い。
崖を一気にのぼる猫達、やっぱり野生的だ。
尾が長くプロポーションがいいのが、今回の旅行の猫観。

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海岸のビーチパラソルとレストランを経営している所で、虎ネコがいた。
「正式に飼っているわけではない」
と、言葉少なく主人が言う。
この猫は幸せものだ。ボクが見た限りではいちばん栄養が行き渡っている。
どんな料理を頼んでも、大盛りだから猫好きは、つい与えてしまう。
それをちゃんと知っていて、足下で待っているネコ。
言うまでもなくこの猫がいちばん人なつこかった。
裏口の階段に座って、一服していた台所のオジさんが愛撫している姿は絵になった。

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夜が訪れる。
どこのテラスのレストランでも猫を見なかった。
もう日中におなかいっぱいになっちゃったからだろうか?
おかげでカメラマンとしては、夜の彼らを撮りそびれてしまった。

でも、ホテルから近い、老舗らしいレストランの広い階段の、上の方に子ネコ達は毎夜必ず現れた。
閉店してからだからもう真夜中に近い。
階段のずっとずっと上のほうにてうずくまって、近づくとぱっと逃げてしまう。

一度母親らしき猫を見た。道を横切り階段を上ろうとしたとき、こっちをじーっと凝視した。
猫の凝視。不思議な理解しがたいもの・・・自己防衛、情愛、疑い、または空腹?そこには全てがあるような、ないような。

姿態は長く優雅でプロポーションはいいが小さい。頭は卵くらいしかないのだ。
カメラをセットしようと、ぼやぼややっていると、子ネコ達の方に向かって敏捷に上って行った。(k)










| 小説とエッセイ | 10:04 │Comments4 | Trackbacks0編集

猫ショートショート
<あと75話>
stanza




猫のいる部屋
オレンジ色のバラを買った最後の客が店を出て行くころ、そろそろ閉店の時間になっていた。
ロムが一息つきながら、通り過ぎる人や車をぼんやりと眺めていたときだ。

店のまん前に一台の黒い高級車が止まった。
運転をしていた背の高い女が降りてきて、ロムに言った。

「くちなしの鉢植えを届けてほしいの。明日の夕方7時に。時間は守ってちょうだいな」
店の奥にいた主人に金を払い、ロムに住所をメモした紙片を渡すと、女は再び車に乗り込んだ。

ロムの目が車の後席に何気なく移ったとき、顔色の悪い痩せた女と目があった。
異常に大きく病的な瞳のこの女もロンを見ていたようだった。
車が動き出すと、女は目をそらした。

翌日の夕方、ロムはメモされたアドレスへ、自転車でくちなしの植木を届けに行った。
市内でも有数な高級住宅地で、石畳の広い通りの左右には、古風でいかめしいアパートが並んでいるところだ。

約束の7時かっきりに、ロムが門のブザーを押すと、返事はなく大きな鉄の門がギーイっと音を立てて開いた。
門番はロムの訪れを知らされていたかのように、エレベーターのところまで案内してくれた。
最上階で降りると、例の背の高い女がドアのところに立っていて、ロムをサロンに導いた。
鉢植えを床に置き、帰ろうとするロムに女が初めて口を利いた。

「しばらくここで待っててちょうだい」
ロムはソファーに座って待っていたが、誰も現れず、夕日がかすかに部屋を明るくしていた。
くちなしの香りを鼻腔に感じながら、彼はそのまま眠ってしまったのだった。
            *

誰かに胸の辺りを触られている気配で、ロムは目を覚ました。
自分の胸にすり寄っているのは、一匹の白と灰色のぶちの猫だった。

ロムが両手で取り上げて抱きしめると、猫は顔をすり寄せてきた。
アーチ型の大きな窓から、朝の光が部屋いっぱいに差し込んでいる。
天井の高いとても立派な部屋のベッドに、自分が寝かされているのをそのとき気がついた。
広い室内を見回すと10匹くらいの猫が、ものめずらしそうに彼を見ていた。
トラ猫や、白黒のぶちや、いろんな色の猫が、思い思いにポーズを取って、ロムを見ているのだ。

どの猫も立派で、美しい姿をしていた。大理石の彫刻が施された暖炉の上や、棚の上や、楕円形のモザイクのテーブルの上、または優雅なソファーの上に猫たちは思い思いのポーズで休んでいた。

ドアが軽くノックされて車椅子の女が入ってきた。昨日、黒い車の後席にうずくまるようにしてロンを見ていた女に違いなかった。彼女の下半身はかけ布で覆われていた。車椅子を引いてるのは、あの背の高い女だった。

「何にも心配することはないのよ。食事ができているのでキッチンにいらっしゃい」
車椅子の女はにこりともしないが、思いやりのある声の調子で言った。

新しい服を与えられて、キッチンに行き、この主人らしい女と食事をした。
貧しいロムが今まで口にしたこともないような立派な食事だった。トースト、玉子焼き、野いちごやベリーズのママレード、ミルク、オレンジジュース、珍しい果物。

「あなたに猫たちの面倒を見てもらいたいの。どの猫もとってもおとなしくお行儀がいいし、私の愛する猫たちなの」
女はリリアンと名乗った。彼女はすでにロムの名前を知っていた。

リリアンはこれからロムがしなければならないことなどを、ゆっくりと話した。その大きな瞳をロムから一時も目を離そうとせずに。

こうしてロムは猫の世話をしたり、昼寝をしたり、テラスの花に水をやったり、ネコたちと一緒に音楽を聴いたりしながらの生活が始まった。日々は過ぎ去っていったが、ロムは帰りたいなどと悩むことはまったくなかった。

ある夜、もうそろそろベッドに入る時刻になっていた。
ロムがテラスから出て寝室に向かっていると、どこからか女のすすり泣きを聞いたような気がした。
長い廊下の突き当たりのドアが少し開いていて、光が漏れている。

ロムがそっと中を覗いてみると、リリアンがソファーに沈み込むように座っている姿を見た。

「どうしたんだい?どうして泣いてるの」

女は涙を拭きながら、
「なんでもないの。ちょっと寒いだけよ。暖炉に火をおこしてくれないかしら?」

ロムは言われたように火をおこした。
「お願い。寒いの、あたしを抱いて。あなたの体温がきっと暖かくしてくれるわ」
ロムは躊躇したが、彼女の後ろに回ってそっと抱きしめた。
「いい気持ちだわ。あたしをベッドまで運んでいただけないかしら?」

ロムは再び前に回って、両腕で彼女を抱きかかえた。
かけ布をかけたままのリリアンの下半身は骨さえもないのではないかと思われるほどだった。
ロムは注意深く彼女をベッドに横たえた。

「ロム、しばらくここにいて。あたしを抱いて。眠くなるまで」
ロムもベッドに入り、後ろかやせ細った体をしっかりとだきしめた。

「気持ちいいわ。あたし、あなたのこと大好きよ。あなたの黒い瞳と黒い髪。大理石のような白い肌・・・ロムってとってもやさしいのね」

ロムは片手で抱きしめ、もうひとつの手でやせ細った体をやさしくなぜた。
体にはほとんど肉がなかった。特に足のほうに。
彼は彼女のことを本当に不憫に思って、心をこめて抱いた・・・

ロムはかすかにリリアンの体温を感じながら、すっかり記憶の外にあった故郷の弟妹のことを思い出した。

海を越えてこの国にやって来たのは自分だけだった。弟妹は今どうしているのだろうか。そんなことを考えていると、目がしらが熱くなった。
やがて一滴の涙が頬を伝わり、女の首筋に落ちた。

「あなた、泣いてるのね」
「遠く離れている弟や妹のこと思い出したんだ」
「帰りたいの?」
「・・・うん」

      *

寝室に戻ってきたとき、ロムは窓から射し込む夜の光を頼りにベッドのほうに歩いて行こうとした。夜、明かりをつけることはリリアンに硬く禁じられていたからだ。

ロムは暖炉の上の鏡を見た。だが、暗くて自分の姿を見ることは不可能だった。
それでも彼は鏡に向かって独り言をいった。
「お兄ちゃんは帰ってくるからな。待っていな」

自分の声と同時に猫がミャオミャオとつぶやいているような気がした。気のせいだったのだろうかなどと思っているうちに、深い眠りに落ちていった。

朝、目が覚めたとき、すでに日の光が広い室内に射し込んでいた。

室内を見回して、ベッドに見知らぬ若者が寝ているのを見て驚いた。
おや、変だな?ベッドでは自分が寝てたんじゃあなかったっけ。

若者も目が覚めたようだった。

ロムは若者に挨拶をしようと思いベッドに近づいた。青い瞳の美しい若者だった。
ベッドに飛び乗ったロムを若者は抱き上げて、快活に言った。
「チャオ。素敵な黒ネコくん、はじめまして」

そのとき、ドアがかすかにノックされ、車椅子に乗った女が入ってきた。
車を引いているのはあの背の高い女だった。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 12:18 │Comments3 | Trackbacks0編集

猫ショートショート<あと76話> 


dannagatta

猫女

ロジーナ。
この愛すべき名前の女の姿かたちは、名前のイメージとはほど遠いかもしれない。
身長は140センチ足らず、顔はしわくちゃで、天候や時刻で35歳くらいに見えたり、70歳くらいに見えたりするのだ。村人はロジーナがどこで生まれてどこからやってきたのかも、知っている者はいない。灰色の目つきが何とも意地悪そうに光っているので、子供たちは怖がった。

葬儀や祭日のミサのときに、神父が説教をしている間、ロジーナは参列者の間をめぐって笊を差し出し、献金を仰ぐ。脅迫的にぎょろりと見すえられると、村人たちはわずかの小銭を笊の中に投げ込んだ。
その金が教会のための献金なのか、ロジーナのためのものかわかったものではないなどと、陰口を利く者もいた。

ロジーナはアル中なのだ。
安いウイスキーや、ワインをラッパ飲みしながら、夜ふらふらと歩いているのを見かけた者もいた。

彼女は教会の隣の神父館の裏口の小部屋に寝泊りしていた。
手伝いの女はロジーナを追い出してしまいたいと言ったが、神父は耳を傾けようとせず、、
「ロジーナも、神の子であることにはかわりない」
と女をいたわった。
       
ロジーナは別名、ドンナガッタ(猫ばあさん)とも呼ばれていた。
彼女がしばしば野良猫に餌を与える姿を見かけたからだ。

子供用のボロ自転車に乗って、墓地の近くの石橋にくると、チリンチリンと自転車のベルを鳴らすまでもなく、猫たちが集まってきた。彼女はぶつぶつ何やら喋りながら餌を与え、猫たちがきれいに平らげてしまうと、また自転車に乗って去って行った。

         *

ある夜更け、若い百姓が自宅へと急いでいると、村はずれでロジーナを見かけた。
雪がちらつき始めた凍りつくような夜のことであった。
彼女はワインの瓶を片手に、橋のほうへと歩いていく。相当に酔っているようだ。

うわさには聞いていたが、泥酔の猫ばあさんを見るのは初めてだったから、若者はつい好奇心から大木に身をよせながら、彼女の後をつけた。

ロジーナは石橋の近くに来ると一度立ち止ったが、ふらつく足取りで田んぼの中に入って行った。
夏になると数メートルの高さのトウモロコシでうずまる畑だが、冬の間はきれいに掘りかえされた不毛の地である。
カチカチに凍り付き、彼女は歩きにくそうに、よたよたと進んでいく。

彼女は畑の真ん中あたりに辿りつくと、どす黒い冬の空を仰ぐようにして、何やらぶつぶつ言いだした。
声は次第に大きくなり、体いっぱいに叫んでいるように見た。

それはあたかも天に向かって呪い、わめいているように聞こえた。
若者は戦慄を覚え、立ち去ろうとした。

そのときロジーナは重心を失ったためか、倒れるようにうずくまった。
そのまま身動きをしない。
若者は彼女の泣き声を聞いたような気がした。

どこからともなく一匹の猫が現れて女にすり寄ってきた。
猫は女の顔をなめたりしていたが、彼女は顔を上げようとはしなかった。

やがてあちこちから猫が現れた。
女のまわりには、いつの間にか何十匹もの猫が彼女を取り囲むようにすわっていた。
声を発する猫はおらず、ロジーナのすすり声だけが、不毛の地にかすかに響いていた。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 03:54 │Comments0 | Trackbacks0編集

猫、ショートショート <あと77話>
ピアニストの猫
pi




「お別れのときがきたわ。かわいいあたしのミル。でも、たった1ヶ月半だけ。わかってるわね。いい子で帰りを待っててね」
エリーザは三毛猫ミルを抱き上げてほお擦りした。
小学校のときから飼っているこの老猫を、エリーザは自分の分身のように愛していた。

「車が来たわよ。さあ。急いで!飛行機に間に合わなくなるわ」
姉のマルタは妹をせきたてた。
エリーザはもう一度、猫に接吻をするとピアノの上に座らせ、部屋を出て行った。

エンジンがかかり、車は夕暮れの中に遠ざかっていった。
静寂の中で正座したミルは石像のように動かなかった。


ピアニストのエリーザが初めての海外演奏に出かけることになり、その間、猫のミルは姉のマルタのところに預けられることになった。

3日目の夜更け、猫のミルは遠くかすかに聞こえてくるピアノで目が覚めた。

ミルはこっそりと台所から外へ出ると、ピアノの調べに向かって歩き出した。

ピアノはエリーザの家のほうから聞こえてきた。姉妹の家はそれほど離れていなかったので、ミルは難なくエリーザの家につくことができた。

ミルはドアに向かってミャオと小さく鳴いた。

ドアが開き、薄い白のガウンをまとったエリーザが姿をあらわして、ミルを抱き上げた。そしてベッドまで運び一緒に寝た。

翌朝、夜明け前に、ミルは姉のマルタの家に戻って来たので、家族は何も知ることはできなかった。

その夜も、ミルはピアノの調べを聞いて起き上がり、エリーザの家に向かって歩いていった。ドアの前でミャーオと小さく泣くとドアが開いて、エリーザが姿をあらわし、抱き上げた。

そんなことがほとんど毎夜起こっていた。

ある明け方も近いとき、たまたま目を覚ましたマルタが、猫がいないことに不振を感じていたら、ミルが戻ってきた。
マルタが「ミル、どこに行ってたの?」と声をかけたが、まるで聞こえないかのようにかごの中にうずくまり、寝てしまった。

「きっとミルは夢遊病なんだよ」
朝食のとき、笑いながらマルタの夫は言った。

あまり頻繁に出ていくので、マルタは不審に思い、こっそりと様子を伺うことにした。

夜更け、猫が台所から出て行くのを見かけると、マルタはそっと跡をつけた。
ミルはエリーザの家のドアの前まで来るとニヤオーと小さく鳴き、そのままうずくまって寝てしまった。


数日たってエリーザから電話があった。

彼女は演奏会が大成功に終わったことを夢中で話し、次ぎの契約も間違いないだろうと言った。新しいマエストロに恋しているともた。
だが、猫のことを何も聞かないので、姉は老猫の奇行のことは話さなかった。

ある朝早く、ミルの姿が見えない。
日が高く昇ってもミルが戻ってきていないので、マルタは妹の家まで行ってみた。

ミルはいつものようにうずくまったまま、息絶えていた。



マルタが猫を抱いて戻って来たとき、夫がエリーザから電話があったことを伝えた。

ロンドンでの演奏会の後、そのままアメリカへ向かい、長期間滞在することになるだろうという内容だった。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 12:36 │Comments2 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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