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イタリア猫ショートショート/あと51話
イタリア猫の大人の童話です。


恐怖の大晦日/後編annno


そして又、ドドドーン!つんざくような、脳の奥までショックを与える爆音。
目が回る。視界が白くなってくる。

ドーン、ドドドーン!

「まあ、きれい!これを見なきゃあ年越し気分がでないわね!」
「ほんとだ!それに年ごとにエスカレートしてくるみたいだ。すっごい大掛かりだ」

サロンの窓をいっぱいに開けて、感嘆の叫びと溜め息を。

ドーン、ドーン

「あ、今度は街の中心の方からだ」
彼らは、一体となって寝室の方に移動する。そこから小さなテラスに出られるようになっている。
乗り出して、白い息をハーハーして、大人の花火鑑賞なのだ。

ドーンドーン。

「すっげえ!火の粉が家の中まで入って来そうだ」
そして、またどやどやとサロンに移動する。そんなことを繰り返す。

ボクはといえば、心臓は早鐘のように打ち、目眩を感じ、体内の器官も活動を中止している。
うろちょろよたよたしていたが、やっと家具の隙間に紛れ込むと、うずくまった。

ああ、この地獄はいつまでつづくのだろうか。

ドーン、ドーン!

               *

「もう、2時半を回っちゃったわ。ああ,疲れちゃった。明日は寝正月、寝たいだけ寝てていいのよ」
奥さんは化粧を落しながらしんどそうに呟く。
「そうこなくちゃあ」

先にベッドに横になった旦那さんが、奇声を上げて飛び起きた。
「臭せえっ。メルダ!」

『ほんとだ。強烈だわ。どっからかしら?ねえ、ちょっと起きて見て」

「あっ、ここだっ!!」

「まあ、マックスったら何て子なの。こんなこと初めてよ」
「花火でショック受けたんだよ。哀れなマックス」

ちゃんと砂箱のなかで・・・事実はボクはベッドと壁の隙間に逃げ込んだときにやっちゃったらしいのだ。
精神分裂を起こした哀れな老猫。
肉体と魂は一緒に衰えていく。
マックス、お前、もうおしまいだ。

昨年までは、ドーン!ショックは酷かったけど持ちこたえた。
でも、今年はもう、ショックに耐える力はなかった、ってこと。

「それにしても、随分立派なのやったなあ。マックスは」
旦那さんが感心している。
「これぞ、幸ウンの印!」彼は叫んだ。
「2009年はきっといいことあるぞ。ブラヴォー、マックス!」

意外なことでお褒めの言葉を頂いた。

「あれっ、こいつテレビの後ろにもやってらあ」
「サイドテーブルの下にもやってたわ」

そうなんだよね。ボクは3日間も『幸ウン』を家中まきちらした。
そして分裂症は正月4日にやっと回復したのだ。

ふっと、ホシムクドリのおじさんとの話を思い出した。
『花火こそ、われわれホシムクドリを衰退させる最高の恐怖』
そう言ってたな。
ミランが勝ったら、インテルが勝ったら・・・・ワールドカップでイタリアが勝ったら・・・・
歓喜のドドドーンで、心臓マヒで何万というホシムクドリが命を落すという。

「もう、大晦日パーティーは禁止だ。マックスがあの世に行くまではもうやるまい」
旦那さんはボクを抱き上げながら言った。
「まあ、そんなのって・・・・」不満顔の奥さん。
「可愛そうだよ。マックの責任じゃあないんだよ」

やさしい。
そんなこと聞くと、もっと長生きしたいなあって気持ちにもなるよね。(K)



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| 猫.cats,gatti 100の足あと | 14:52 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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