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猫・ショートショート<あと79話>

マルペンサ~ヘルシンキ~マルペンサ 1

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お隣に座った白いチューリップのような高校生。

まだ1年生? 2年生? 高校生か中学生か判断がつかないほど幼い面立ちだ。
カールした栗色の髪はまん中で分けられ、そのまま肩の下まで流れている。

目が黒い(真っ黒)。たまに真っ黒な小石みたいな目をした人を見かけるけど、彼女もそうだ。
でも、ラテン系とは、ちと違う。

プロフィールはまあまあってところ。

その隣は彼女の無二の親友らしい、メがねのおデブちゃん。 離陸する前から、駄菓子みたいな物をムシャムシャやりながら、おしゃべりが絶えない。

お隣の可愛コちゃん、ときどきちらっとこっち(ボク)を見るのは自分の気のせいだろうか?。
ボクは窓際だが、後ろも前も、彼女等と同じような高校生らしき乙女達でいっぱいなのだ。
つまり、ボクは花の乙女達にとりかこまれてるってわけ。
男の子もいるが3分の2以上は女の子。

この飛行機はチューリッヒから、ヘルシンキへ発とうとしている。
娘たちは修学旅行が終わって、ヘルシンキに戻るところなのだろうか。
引率の教師らしき年配もいる。

離陸するときはちょっと静かになったが、ベルト解禁になると、その賑やかさは格別だ。
席から離れて、あたかも自由時間の教室って感じだ。

ボクは窓際のシートでよかった、全く。
ミラノの代理店に,絶対窓際をと頼んだのは上出来だった。

お隣の娘は、また、ちらっちらっとボクの方を見る。やっぱり見られてんだ。 そして、おデブちゃんとこそこそ何やら耳打ちして、又ボクを見る。

「ハロー」とボクから声をかけた。

ボクにとって、こんな小娘に眺められることなんて最近ないのんだもの。
チャンスは 貴重なのだ。

昔、北欧を旅行したときなど、列車の中で女学生や家族と親しくなり、 その後、カードのやり取りなどした思い出もあるけど、もうこの年だからね。

彼女はズバリ、切り返してきた。
「あなた、日本人?韓国人?」

誇り高く、「ジャパニーズ」

やっぱりと娘は声をあげ、おデブちゃんにまたチョコチョコっと耳打ちして、ニーッ。

何のこたあない、彼女ら、この変てこな東洋のオヤジのこと、日本人?韓国人?どっちか、当てっこしてたらしいのだ。たったそれだけのこと。

あまりにも他愛ないけど、そりゃあ、80才のお婆ちゃんに質問されるよりは楽しいよね。

娘は飴をくれたりする。
サンキュー・ヴェリマッチ!
一滴の夜露のような思い出が出来るなんて・・・

ボクは暇つぶしにデジタルカメラの撮りだめを覗く。
出発前に撮ったミラノのわが猫、カロータのスナップが出た。

カロータよ、お前をほっぽらかして、オレはヘルシンキヘ向かって雲の上だ。ゴメン。 上階のエンリコおじさん夫妻に可愛がられるんだよ。 ゴハンくれたら、シッポをきれいにまいて、お行儀良くお座りして、それから頂くんだ。 わかってるだろ?

「ほら、これウチのネコ。名前はカロータ。Carrot」

娘は頓狂な声をあげた。そして、
自分の携帯をもぞもぞ取り出して操作していたが、無言でボクの前に突き出した。

なんと一匹の黒猫がぼけーっとこっちを見ている。
「可愛いわぁ」 彼女、飼い猫のクロにメロメロなところを見せる。
2人の趣味もちょっと似ていたってところで、新たな一滴の朝露。

彼女、自分のクロ猫ばかり褒める。名前なんて言ったっけ。
彼女、赤毛のカロータには一切関心がなさそうで、チとがっかり。
自分の猫がいちばーん可愛いと信ずる飼い主の魂の構造は、世界の原則なんだ。

何を隠そう、ボクだって黒猫には感度が低いのである。
真っ黒だから目だけがギョロギョロして表情が乏しい(?)。いや、そんなことない?
人間に例えると、何考えてるのか掴みどころのない(薄気味悪い)タイプってとこか。
それにこのクロちゃん可愛くないなあ。カロータ、お前の方が10倍も100倍もマシなこと確実だよ!

以前、黒猫がスパゲッティを食べてる絵をクリスマスカードに送ったら、
『黒猫は悪運を招くのよっ!』
って、怒鳴り散らした女(イタリアの)がいた。 いや、それだけではない。

3匹目に飼った雌猫ミリーチャが、同じアパートのけったいなブクブクの黒猫と関係して、ハランでしまったというニガい経緯もある。

まあ、いい、黒猫は悪運を運ぶって言われてるんだけど、フィンランドでも同じかな?
君、気を付けるんだよ。      

   *

そろそろスカンディナヴィアに近づく。

突如、娘は奇妙なことを言った。
「席を変わってくださらない?」

え?なんでーエ? 
「あたしフィンランドを上から見たことないの」
なんだって?
「(甘え声で)ミャーオ、変わってェ」

ギャーオ!イヤだ! フィンランドは生まれてはじめてなんだ。多分もう来ることもないフィンランド!
スオーミ(湖)がホシのようにちりばめられた黄昏のフィンランドを機上から眺めることを、今回の旅行の一大プランのひとつでもあったんだから。

キミ、だだこねるんじゃないの。絶対にワガママは受け入れんぞ。

「ノー。ボクだって見たいんニャもん!」 と、中学生レベルでギャっと言い返してやった。

ハネムーンで見ればいいじゃんか。 オレは見たいんだ。フィンランドの黄昏を空の上から。一生に一度のチャンスなんだ。

娘は恨めしそうな顔をした。一瞬、彼女の目、黒猫に似ていると思った。
気分を悪くした彼女は黙ってしまった。

そして、ボクは額に強力な接着剤をくっつけられた猫ように、窓に顔をおしつけて地上をながめていたのであった。 残念! 空からのフィンランドは、期待はずれのものだった。 もう、夕闇が迫っていたから、半島よりも点滅する光だけなのだ。

こんなことならキミにこの席譲ってやれば良かったぁ、と後悔がちょっぴり。
席を変えてやりたくてもシートベルトに縛り付けられてんだもの、オレの責任じゃあないっと。
でも、後味の悪い思いは残る。

キミ、クロ猫でボクに悪運を呼んだりしないでくれよ、ニャ。(つづく)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 00:43 │Comments1 | Trackbacks0編集

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コメント

つづきがとってもとっても楽しみです!

2009.05.25(Mon) 17:53 | URL | Yoko|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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