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猫ショートショート<あと76話> 


dannagatta

猫女

ロジーナ。
この愛すべき名前の女の姿かたちは、名前のイメージとはほど遠いかもしれない。
身長は140センチ足らず、顔はしわくちゃで、天候や時刻で35歳くらいに見えたり、70歳くらいに見えたりするのだ。村人はロジーナがどこで生まれてどこからやってきたのかも、知っている者はいない。灰色の目つきが何とも意地悪そうに光っているので、子供たちは怖がった。

葬儀や祭日のミサのときに、神父が説教をしている間、ロジーナは参列者の間をめぐって笊を差し出し、献金を仰ぐ。脅迫的にぎょろりと見すえられると、村人たちはわずかの小銭を笊の中に投げ込んだ。
その金が教会のための献金なのか、ロジーナのためのものかわかったものではないなどと、陰口を利く者もいた。

ロジーナはアル中なのだ。
安いウイスキーや、ワインをラッパ飲みしながら、夜ふらふらと歩いているのを見かけた者もいた。

彼女は教会の隣の神父館の裏口の小部屋に寝泊りしていた。
手伝いの女はロジーナを追い出してしまいたいと言ったが、神父は耳を傾けようとせず、、
「ロジーナも、神の子であることにはかわりない」
と女をいたわった。
       
ロジーナは別名、ドンナガッタ(猫ばあさん)とも呼ばれていた。
彼女がしばしば野良猫に餌を与える姿を見かけたからだ。

子供用のボロ自転車に乗って、墓地の近くの石橋にくると、チリンチリンと自転車のベルを鳴らすまでもなく、猫たちが集まってきた。彼女はぶつぶつ何やら喋りながら餌を与え、猫たちがきれいに平らげてしまうと、また自転車に乗って去って行った。

         *

ある夜更け、若い百姓が自宅へと急いでいると、村はずれでロジーナを見かけた。
雪がちらつき始めた凍りつくような夜のことであった。
彼女はワインの瓶を片手に、橋のほうへと歩いていく。相当に酔っているようだ。

うわさには聞いていたが、泥酔の猫ばあさんを見るのは初めてだったから、若者はつい好奇心から大木に身をよせながら、彼女の後をつけた。

ロジーナは石橋の近くに来ると一度立ち止ったが、ふらつく足取りで田んぼの中に入って行った。
夏になると数メートルの高さのトウモロコシでうずまる畑だが、冬の間はきれいに掘りかえされた不毛の地である。
カチカチに凍り付き、彼女は歩きにくそうに、よたよたと進んでいく。

彼女は畑の真ん中あたりに辿りつくと、どす黒い冬の空を仰ぐようにして、何やらぶつぶつ言いだした。
声は次第に大きくなり、体いっぱいに叫んでいるように見た。

それはあたかも天に向かって呪い、わめいているように聞こえた。
若者は戦慄を覚え、立ち去ろうとした。

そのときロジーナは重心を失ったためか、倒れるようにうずくまった。
そのまま身動きをしない。
若者は彼女の泣き声を聞いたような気がした。

どこからともなく一匹の猫が現れて女にすり寄ってきた。
猫は女の顔をなめたりしていたが、彼女は顔を上げようとはしなかった。

やがてあちこちから猫が現れた。
女のまわりには、いつの間にか何十匹もの猫が彼女を取り囲むようにすわっていた。
声を発する猫はおらず、ロジーナのすすり声だけが、不毛の地にかすかに響いていた。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 03:54 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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