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猫・ショートショート / あと71話
ヴォーヴと 『テーブルの真ん中』 (1)
volpe 1

わたしの名前は『Centro tavola(テーブルの真ん中)』。

ちゃんと『ミリー』という名前があるのですが、いつのまにやらそう呼ばれるようになったのです。
私は夜眠くなると、台所の大きなテーブルに飛び上がって、その真ん真ん中で寝る習慣があるからです。私の子供達もそうしたくて飛び乗ろうとするのですが、ここの奥さんに許してもらえません。
私だけは特別扱い。きっと、この家の中心的存在、いわば、わたしはもう7才で、母親的、ボス的な存在だから、好きなようにやらせてくれるのでしょう。

お客さんや近所の人達が、夜の更けるのも忘れてテーブルを囲んでワインを飲みながら話し込んだり、トランプに夢中になっていても、眠くなった私は、ひょいと彼らのど真ん中に陣取って横たわります。
客達もみんなそのことは承知で、
「『テーブルの真ん中』が、眠そうだよ、そろそろ引き上げようか」
などと、腰をあげるくらいなのです。でも、今、私は身ごもっていて、上り切るのはちょっと大変なので、誰かが、抱えて上らせてくれます。

この家には私と私の子供2匹の猫の他に、子犬のポトスとフリ兄弟がいます。私は子犬にまで、自分の子供達と分け隔てなくおっぱいを与えていたくらいなのです。

こんな大勢が台所の中を駆け回ったり、戯れたり、たまには喧嘩をしたりするのですから、大変です。
奥さんもさすがに『静かにして!』て叫ぶことも、1日に二度や三度ではありません。
幸いに、このお台所は、見当が付かないくらい大きく、いわゆる『土間』と呼ばれるものでしょうか。
この家の一階は、殆ど台所で占められているのです。赤い素焼きの床は、夏はひんやりとして、冬は大きな暖炉が暖めてくれて、とてもしのぎやすいのです。その一角、わりと暖炉に近い所に、笹の寝床があります。

夜は、ちゃんと9時頃には、規則正しく子供達は笹の中で床につきます。
寝床は1メートル平方もある四角で、柔らかい麻布が敷き詰められていて、その上で『雑こ寝』というわけです。みんな仲良く、体をくっつけあって・・・これでお分かりでしょう。ボス的存在の私は、寝る時くらい一人でのうのうとしたい気分になることを。

この家族は、製麦工場で働いているフェデリコさんと、奥さんのマリアさんと、5才になる男の子、ロビーこと金髪の巻き毛のロベルトのたった3人だけです。
こんな大きな家は勿体ない感じだけど、だからこそ、動物をいっぱい飼いたくなるんでしょうね。

フェデリコさんも奥さんもロビーも大変な動物好きなのです。動物なら何でも飼いたいって感じ。
もちろん、カナリアや亀や金魚も飼っています。


夏もほど遠くないある午後のことでした。
車の止まる音がしたので、マリアさんが外へ出てみると、遠縁のおじさんが小型トラックから降りてくるところでした。迎えに出たマリアさんに、彼は両腕に抱えている小さな動物を見せました。その生き物は死んだようにだらんとしていましたが、私が今までに見たこともない姿をしていました。
犬とも猫とも違っていて、黄色くて鼻が少々とんがってて、耳がとっても大きいのです。

「丘の雑木林で見つけたんだよ。ほら、怪我をしてるんだ」
 ニーノおじさんは家の中に入り、テーブルの上に横たえました。
「この子狐は、きっと森の中を迷っているときに撃たれてしまったんだよ。後ろ足をやられているみたいだが、弾はそれている。マリア、傷の手当を頼むよ。狐なんか持って帰ると、女房から離縁を迫られそうだもの」
ニーノおじさんは、笑いながらそう言って車に乗り込みました。

子狐は回復するまで、別の小さな籠の中に寝かせられて家族に大切に育てられました。
そして一週間後には、とっても元気になりました。
彼は家族からヴォーペと呼ばれるようになったのです。
小さなロビーがヴォルペ(狐)と正確に発音出来なくて、ヴォーペ、ヴォーペと呼んでいるので、そのまま名前になったのです。

「さあ、ヴォーペもすっかり元気になったのだから、今夜から仲間と一緒に寝るんだよ」
マリアさんに大きな籠の中に寝かされると、ヴォーペは聞き分けよくそのまますやすや寝てしまいました。

ヴォーペは連れて来られた時は、ほんの小狐だったのに、だんだん大きくなっていきます。彼はロビーのお気に入りで、ロビーが保育園から戻ってくると、さっそく『ヴォーペはどこ?』って開口一番聞くのです。
ヴォーペは本当にいい子で可愛らしいので、近所の人の間でも人気者でした。顔がほっそりして痩せ形で尻尾が長くてふっくらして、先っちょが白いのです。オレンジ色のつぶらな瞳の可愛らしさといったらありません

眠くなって閉じた瞼は愛らしく綺麗で、ヴォーペを好きになれない者なんて考えられないほどなのです。与えられた物は、何でも食べるのですから、世話の掛からない子ねって、マリアさんも喜んでいました。

 そのヴォーペが・・・
 夕暮れになっても、帰って来ないことがあったのです。ちょうど、食事時で、外は暗くなりつつある頃でした。家族も私たちも、全員土間にいたのでしたが、二階から降りてきたロビーが、お気に入りのヴォーピがいないことに気が付いたのです。
「パパ、ヴォーペは何処?」(つづく)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 21:48 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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