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猫・ショートショート /あと68話
ジジ

マリとジジ (その1)

「マリ、ボクとネコとどっちを選ぶ?」
エルネストはベッドの中でささやいた。
マリは答えることが出来ず黙っていた。

            *

フリーのブックデザイナーとして働くマリは一匹の白ネコと暮らしている。
それほどネコに関心があったわけではないが、あることから突然、この白ねこと暮らさなければならぬ羽目になったのだった。

半年前まで郊外の叔父夫妻の家に住んでいたマリは、仕事上不便を感じて都心でアパートを探していたが、そんな彼女に意外と早く手が差し伸べられた。

知人を通して紹介されたアパートは、運河添いのアーティストがいっぱい住んでいる、便利のいいところにあって、環境もよく、仕事をしながら一人で住むには十分なスペースがあった。しかも家賃は予想の半額くらいだったのだ。

家を見に行ったとき、ソファーで寝ていた真っ白なネコが、むっくりと起き上がって、半開きの青い目でマリを見た。
家主である女性は猫を抱き上げながら言った。
「このネコの面倒をていただきたいの。それが条件よ。死んだ母がとってもかわいがっていて、嫌がらずに見てくれる人に住んでもらうようにって、言い残したの」

マリは条件を受け入れた。
「これであたしも安心してボストンに帰れるわ」
家主の女性は契約が終わったとき、ほっとしたように言った。

午後引越しをしてきたマリが部屋の整理の途中一息ついていると、白いネコは彼女のひざの上に上ってきた。
マリは「よろしくね、ジジちゃん」と、ネコを抱き上げた。
            
マリはブック見本市でひとつ年下のエルネストという編集部員と知り合った。
交際を続けている間に彼女は、その男に夢中になってしまった。
30過ぎていても、今まで恋に落ちた経験は一度もなかったマリだったのだが。

初めて彼を我が家に招待したとき、エルネストは叫んだ。
「ネコがいるんだな。僕はすごいネコアレルギーなんだよ」
「あなた、我が家に猫がいることは知ってたはずよ」
マリは抗議した。
数分も立たないうちに目から涙が出てきて、エルネストは苦しげに叫んだ。
「ボクは、猫はだめなんだ。ボクは帰る」
彼はそう言い残すと、アパートを出ていってしまった。

翌日、エルネストはネコを飼っている以上、君と一緒になることは出来ないだろうと言ってきた。

エルネストを選ぶかネコのジジを選ぶかを迫られたマリは悩んだが、結局、彼を選んだ。
今、彼と別れたら、一生愛する男にめぐり合えないという不安があったのだ。

「あの男には要注意よ。ハンサムだけどね」と、友人に警告されたマリだったが、それはやっかみだと、マリは聞き流した。

思案した結果、マリはネコを叔父夫妻のところに預けることにした。
姪を愛している彼らは、それを受け入れた。

ボストンにいる家主の女性から、
「すべてうまくいってる?」とメールが入ったときマリは、
「すべてOKですよ」と返事を送った。

       *
マリは親友のアンナから、結婚招待状を受け取った。
乗馬で結ばれた新郎新婦は、市から30キロも離れた農家の庭で披露宴をやるということで、マリはエルネストと、この招待を受けることにした。
披露宴は夕方7時頃から、明け方までのノンストップと招待状にしたためてある。
「私たちの祝福とともに、あんたも一夜徹底的に楽しんで欲しいわ」と、アンナの手書きの補充もあった。

初秋の日が沈む頃、刈り入れもま近かな田園の中を、2人はマリの車でパーティの会場へと走った。

鉄格子の大きな門の外は、すでに招待者の車やバイクでいっぱいになっていた。
百姓風の若いグループがサクソフォーンとギター、コントラバスのトリオで会場を盛り上げている。

大勢の客で混雑する中で、マリは新婦と新郎をエルネストに紹介した。
そこには、もう一人の女がいた。
花嫁アンナの従姉妹でジュリアという娘で、この深夜パーティのオルガナイザーとのことである。

ジュリアに熱い視線を注ぐエルネストを見て、マリは動揺した。(つづく)






| 猫.cats,gatti 100の足あと | 05:27 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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