上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- │Comment- | Trackback-│編集

猫・ショートショート あと67話
マリとジジ(その2)

mari jiji 2

12時過ぎになって芝生に夜露が下り始める頃には、広い農家の庭は客であふれ、パーテイは最高潮に達した。無数の即席のライティングが目もくらむばかりだ。
デザイナーやアーティスト風、学生や近所の農家の人と思しき夫婦たち、子供たちが、喋ったり踊ったり食べたり飲んだりしていた。

マリが顔見知りのデザイナーと挨拶をし終わった後、エルネストの姿が見えないのに気がついた。
マリは人ごみの中を探しながら、いつの間にか裏庭の方に迷い込んでしまった。
農機具や眠りに落ちている家畜の小屋などがあるところで、その付近には人の姿はまったくなかった。

マリが再び人々の方へ帰りかけたときだ。人の気配を感じて、彼女はレンガの柱に身を隠した。
おぼろげな裸電球の中に一組の男女が現れた。
彼らはしっかりと抱き合った。
エルネストと花嫁の従姉妹だった。

カップルは体を離すと、手を取り合って真っ黒な雑木林の方に向かって戯れるように歩き出した。柵のところで、まず男がスポーツ選手のように身軽に飛び越え、それから女に手を貸した。彼女の明るいドレスがぼんやりと蝶のように舞うのを見ながら、マリはその場を去った。
            *

真っ暗な夜の道をマリは車を飛ばしていた。道は広くはないが、舗装されていたのでスピードをだせた。もう、2時頃ではなかろうか。
彼女は嫉妬と絶望に打ちひしがれながらも、後悔の念が心身を蝕むのを感じていた。

かなり急なカーブがあって、そこを通過したときに、白い息を吐いたようなヘッドライトの前方に、何か白いものを見た。それは真っ白な猫が道路をふさぐようにして横たわっているのだった。
はっとして、マリはブレーキを踏んだ。
「ジジ!」
そのときだ。彼女は追突され、身体が前に押しやられた。
彼女が車を飛び降りたとき、50メートルも離れた後ろに、片目を失った怪物のような自家用車が斜めによがんで止まっているのを見た。
飛び出してきた中年の男がわめいた。
「バカ野郎!こんなところでブレーキをかけやがって!」

「死んだ猫が道をふさいでいたから、ブレーキをかけたのよ!」
マリは我を忘れて叫んだ。今までこらえていた苦痛がせきを切ったようだった。
「嘘だと思うんだったら、ここまで見にきたらいいじゃあないの!」

いかなる理由にしろ、追突した者が不利になるのはわかっている。男はそれを知っているのか、マリの剣幕に驚いたのか。再び片目の怪物に乗り込むと、乱暴にエンジンをかけた。
猛烈な勢いで前進してくるのを見たとき、マリはとっさに刈り入れ前の稲畑に転げ込んだ。瞬間、自分はあの車に殺されるだろうと思った。
だが、片目の怪物は起用にマリの車を避けると、あっという間に闇の中に消えていった。

ヘッドライトで照らし出された白い物体は、猫の死体ではなかった。
それは女が身につけるショールに他ならなかった。
長いことじっとそれを眺めていたマリだったが、やがて力なくうずくまると、声を出して泣き出した。(K)


| 猫.cats,gatti 100の足あと | 22:14 │Comments0 | Trackbacks0編集

| top|

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sumurakenji.blog112.fc2.com/tb.php/124-10262a93

すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

すむらけんじへメールする

名前:
メール:
件名:
本文:

イラスト、写真、文の無断使用を禁止

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。