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けんじのイタリア猫・ショートショート/あと62話

ネコかうさぎか
こにgりお

肉屋でのことだけど、夕方、すぐ近所の肉屋に入ったときだ。

店に飛び込んだら、見慣れた白髪頭の主人の変わりに、痩せた若い男がガラスケースの向こうから、いらっしゃい!と声をかけてきた。
白い上っ張りを着た若者はボクの顔を見て、てれたようにニヤっとした。
こいつ、名前はミケーレって言うんだけれど、同じこの通りの先のこの界隈では一番大きな画材点の店員なんだ。

他に客がいなかったから、
「何だよ、またどうして?」(肉屋でアルバイト?)って、つい無遠慮に言ったら、
「親父が腰痛なので、午後から画材店に休暇とって、この店番やってんだ」だそうだ。
ふーん、こいつ、肉屋の倅だったのか。さりげなく、Si_?(あ、そう?)

「さてさて、晩飯には何を食おうかな?」って、ついひとりごと言ったら、ミケーレはすかさず、
「今日は、とびっきり新鮮なウサギがあるんだよ。ウサギ食ったことある?」だって。

「もっちろんさ。日本でだって食ったことはある」なんて返事して、しまった、と思った。
うさぎなんて、今夜食べる気なんてまったくない。それに、自分で料理したことだってないのだ。

「新鮮で身もしまっているから料理は簡単だよ。アローストでやればいい」
こいつしつこいぞ。危ないあぶない。

ガラスケースの中には、もうすでにきれいに皮をはがされ、腸もきれいに除かれたウサギとやらが、まだ、半透明のビニールにきっちりと包まれて、2体ほど陳列されている。頭もちゃんとついている。午後届いたばかりだと言う。

ボクはウサギは絶対に食わないことにしている。よっぽど信用のおけるところ意外は。
たとえば、郊外の知り合いの家ではウサギ飼ってるから、その家では安心してたべられるけど・・・
それだって、これは確かにウサギであると、自分に言い聞かせて。

レストランでもしかり。もしかしたら、猫の肉を食わされるのではないかという恐怖が、絶えずあるからなのだ。
「ウサギと猫は皮はいでしまったら、素人には見分けがつかないほどなんだ」
と、叩き込まれている。
猫のほうがずっとアジがいいんだってことも。

「ううん、オレねえ、うさぎは食わないことにしているんだけどね」
「なぜだい?」
返答にもぞもぞしていたときだ。

うしろから、ぼそっと女の声が。
「あなた、猫飼ってるのね」

はっと振り向くと、入ってきたときは姿がなかったレジに、いつの間にか女が座っていた。
見慣れた肉屋の女房である。
と、いうことは、この女将、ミケーレのおふくろってことなんだ。

この女房は、愛想がこの上なく悪くて、今までにも支払いのとき「グラツィエ(ありがとう)」と、
いかにも有難くなさそうに低くのたまう以外は声をきいたことはなかった。

まず、肉屋の奥まったレジに座っているにしては、ちょっと厚化が念入りしすぎているし、パックがはげてしまうのが怖いのか、笑った顔を見たことがない。
彼女がお得意さんの主婦らしいのと話しているのを一度だけ、かすかに耳にしたことがあった。

どうやら料理について特訓しているらしかった。
「大さじいっぱいのオリーブ油に・・・、ローズマリーノも・・・30分ほど・・・軽く・・・そして・・・蓋開けたら・・・・」
、低い陰気な声はつやがなく、何やらお経でもよんでいるようだった。

その彼女のほうから、以外、
「あんた、猫かってるのね」だってさ。
「え?(どうしてわかるんだい?)」

濃いアイシャドウの灰色の目には活気がない。
やがて、
「上着に猫の毛がついてるわよ」
ハッとする。
外へ出るときは,しらみつぶしってわけではないが、充分注意を払っていたつもりなんだ。
わが愛するカロータの毛。黒い上着だから、たった一本だってめだっちゃうんだよね。

息子のミケーレが、またニャっとした。
「心配しなくっても、これは猫じゃないんだから」

親子でチャーんとわかってんだ。職業的本能で。
ボクがウサギの肉を信用してないってことを。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 12:58 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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