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イタリア猫ショートショート/あと52話
初めて飼った猫との、30年も前の辛い思い出です。
飼い主の無知のため、手術に及ばなかった結果。


パンとノリ助との悲しい別れpan

パンは 夜出て行ったまま、もう一週間も戻って来ない。
もう諦めの境地にいたボクは、それでももしかしたら、とパンの帰りを待っていた。

そして・・・
 10日後に戻って来たパンの耳はちぎられ、びっこをひいている前足の爪からは血が滲んでいた。
猫同士の命がけの戦い、そしてボロボロになって、爪を休めるところはここしかないのだ。

さっそく獣医に手当をしてもらったが、パンが静かにしていたのは2日間だけだった。

回復するとまた外へ出たがって泣きき叫び、仕方なくドアを開けた。
猛烈な勢いで階段を下りて行くパン。

2月の初め頃で、一年中で最も寒さの厳しいときだった。
もう永久に戻っては来ないのだろうか。
車に轢かれたり猫狩りに連れて行かれたのではないかという、連想がボクを悩ませた。
そのころ猫狩りのことはよく聞いていたからである。

2週間経ってもパンは戻って来ない。
ついに雪が降り始めた。
僕はノリ助の外出を止めさせようとしたが、無性に出たがるので外へ出してやった。2時間も経ってそろそろ12時近くになったので、まっ白に積もった中庭に下りてノリ助を呼んだ。だが、ノリ助は帰って来ない。

今までこの猫は必ず戻って来たのだ。外泊などしたことがなかったのに・・・兄貴のパンに巡りあったのかもしれない。

『帰れよ。こんな物騒なところ、お前の来るところじゃあないんだ』
『ううん、ボク、パン兄ちゃんと一緒にいたいの』

そんな場面を想像して、ちょっとばかり心が慰められた。 

こんな辛い思いをするのなら猫を飼うのはもうよそうと思った。
床に入ってうとうととしたが又目が覚めた。もう真夜中の3時に近い。そして又ノリ助のことを考えた。念のために、もう一度庭に下りてみようと服を着替え、ドアを開けたときである。
雪にまみれた2匹の猫がするりと家の中に滑り込んで来たのだ。
まぎれもなくパンとノリ助だった。

チビのほうが
『お兄ちゃん、一緒に帰ろう』
と連れて帰って来たのだとまともに思った。

パンはやせ細って猛烈に腹を空かせていていた。
ガツガツと食べて満腹すると、一眠りしてくれると思いきや、また、奇妙な声で泣き出した。
これじゃあ、隣のサルデニア人の家族だって眼を覚ますに違いない。
そんな奇妙な声で泣くのは止めてほしいと耳を塞ぎたい気持ちで床に入ったが、パンは家の中を走ったり家具に駆け上ったり、それはもう野性のフェリーノそのものだった。

こっちが根負けして再びドアを開けると、パンは外へ飛び出して滑るように階段を降りて行く。
ドアを閉めながら、パンはもう戻って来ないだろうと思った。

そしてその通りになったのだ。

ノリ助はパンの相手として貰ってきた猫だった。
白と灰色の斑。紫色の瞳の美しい子ネコで、浅草海苔が大好きだった。
実に陽気で、いつも僕になついていた。僕の後ろを必ずついて来た。だからパンが永久に戻って来なくても、こいつは可愛がってやろうという気持ちがあった。

ところが、ノリ助はパンが出て行った日から急に元気がなくなってしまった。

ソファーの隅にうずくまったままで、食欲もほとんど無くなってしまったのだ。
浅草海苔もほんのひとかけら。
兄貴がもう戻って来ないことを、ノリ助は肌で感じているのだ。

パンが出て行って一週間も経った頃、ノリ助が久しぶりに出たがるので庭まで一緒に下りていった。

ノリ助は僕に体をすり寄せたあと、サクランボの木に軽々と登ってセメントの塀にたどり着くと、暗闇に小さな姿を消した。

そして、2度と戻っては来なかった・・・

その後しばらく猫を飼わなかった。
でも、友人達はボクの猫好きなことを知っている。
あっちこっちから、「もらってよ」「もらってください」と手が伸びる。
数ヶ月も経つと、またその気になってしまった。

3匹目の猫がメスのミヌーだった。(K)





| 猫.cats,gatti 100の足あと | 21:01 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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