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イタリア猫・ショートショート/あと51話
猫の童話。
楽しい大晦日も、猫を飼っている人はちょっとご注意。

dtce

恐怖の大晦日/前編

キミ、クリスマスと大晦日とどっちが好き?
どっちも好きよ。だって、ごちそういっぱい食べられるもん。
ボクは大晦日は大っ嫌いだ。ボクにとって年明けは一年中で最高の恐怖のひとときなんだ。

ふーん、マックスのところは、ごちそう食べさせてもらえないのね?
そんなことない。美味しいもの腹いっぱいの筈だけど、食欲がまるで亡くなるんだ。
へーぇ、あんたって、全く変なネコね。


           *

クリスマスも終って一段落ついたはずなのに。
年越しも近くなると、我が家の女主人はまたまたそわそわしてくる。

「やっぱりアンティパーストは5種類はなくてはね。そしてラヴィオーリ、そのあとはコテキーノ、ああ、ありふれたものばかりだわ。今年は趣向を変えて見ようかしら・・・・」

「ねえ、君、年越しパーティをまた我が家でやるのかい?ロドルフォの女房が引っ越し祝いに、今年は自分ところでやりたいって言ってたじゃあないか」
「無理よ。あんな、小ちゃなアパートでは。今年はカップルが多いから10人くらいになるの。それに加えて、あなたの弟もボローニャから来るかも知れないし」
「やれやれ、年越しくらい静かにノンビリと過ごしたいよ。大騒ぎはテレビだけで充分だ」

とにかく、大晦日のパーティーは今年もこの家で。
ボクは憂うつになる。動悸が早くなって来る気がする。
一年中で一ばん嫌いな怖ーい夜が訪れようとしている。

31日は朝から、お手伝いさんも特別出勤して、ごちそうの準備。
すごいよねえ。12人分なんだから。

夜,9時前後から、客達は次々とピンぽーン、とチャイムを鳴らして、手みやげを持って現れる。
女達はめかしこんでいるけど、男達はノーネクタイがほとんどだ。

                            *

ああ、それにしても懐かしいクリスマス。
クリスマスの昼の正餐会はよかったな。
家庭の一同が集って・・・息子がスキーに行くために欠席、などという我が侭は許されないし、家族以外の人間といっても、独身を貫き通した叔母さんとか、アメリカから帰って来ている従兄弟くらいだから、本当に『身内だけ』の集いなのだ。

お腹いっぱいになったら、今度はプレゼントの交換。
猫が見たって下らない物ばっかり。
嬉しそうに開けて喜びと感謝のポーズをしたりされたり。
全員、すごく上手に演技する。毎年だから、演技もだんだん訓練されていくんだよね。

そのあとトンボンというゲームをやったり、近くの教会の『キリストの誕生』のペルセピオ(雛人形)を見に行ったり・・・・ちょっぴり宗教的で悪くないなあ,クリスマスって。

ボクも美味しいものいっぱい食べて(クリスマスにしか出ないさい最高級のムースだって、たっぷりとね。旦那さんはこれ食べないので)、あとは窓辺で、雪景色を眺めながら、うとうととする。

               *

でも、年越しパーティはかなり事情が違う。
息子がスキーに行ったりで、残された夫妻はのんびりとテレビを見ながら過ごすって人は多いらしいけど、レジーナさん(ここの女主人)は、まだ若いのだ。大勢集って、食べて喋って踊ったりして人生を謳歌する年齢なのだ。
彼女、まだ39才だけど、30過ぎにしかみえないのが自慢。旦那さん42才。

数年前までは、大晦日にはレストランに行ってたらしい。
レストランの中は溢れんばかりの客達。人息で気がふれんばかりだったとか。

寄りによってシルビオ氏(旦那さん)が、生ガキなどを注文のだ。

カキは来たけれど、レモンが届かず、5回も6回も催促しても、汗だくのウエイターは『シー,シーun'attimo』と応じるだけで、風のように通りすぎる。レモンは届かない。
我慢出来なくなった彼、すでに生暖かくなったカキをレモン無しで食べてしまった。
そして家に帰って来てすっごい下痢をして2日も寝込んでしまった。

あれ以来、年越しレストランはご勘弁,と言うことになったらしい。
「我が家で騒ぎましょうよ。大人だけで」

物静かなシルビオさんの、無言の抵抗もなんの、パーティを始めたのが3年前からなのだ。

そして,今年も。
男も女もよく食べるなあ。胃袋どうなってんの?
そしてよく喋ること。そしてよく飲むこと。

「飲酒運転の規制がきびしくなったんだって」
「交通取り締まりはどうせエピファニア後だろ。今夜はうんと飲まなきゃあ」

アイスクリームが終った頃は、すでに11時50分を過ぎている。
旦那さんはバルコニーに出してあったシャーペーンを取って来て栓を抜く準備をする。
奥さんはテレビのスイッチを入れる。どのチャンネルも大騒ぎのショーばかり。
彼らは刻々と迫る新年を待機している。

あと、6秒、あと5秒、4、3、2、1!
シルビオさんが、ポーンと栓を抜いた。タッポ(栓)は勢いよく天井まで飛び,跳ね返って花瓶の中に落ちた。

時を同じくして、ドードーどーッと爆音が響き、ボクは、一瞬、五感が麻痺し、体がふわりと宙に浮いた。(つづく)



| 猫.cats,gatti 100の足あと | 22:05 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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