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イタリア猫ショートショート/あと48話
猫物語風エッセイです。


見知らぬ客/3
jas3

次の朝のことだ。自分の腕が軽く触られている奇妙な感触で眼が覚めた。
おや?ミヌーかなと思って眼を開けて顔をよじると、稲妻のごとく黒い影がぱっと眼の前を横切った。
なんとジャスなのである。
まだたった2日しか経っていないのに、もう、こんなに慣れ慣れしさ。
お前、調子良すぎるぞ。

陽は高くなっているが、明け方まで本を読んでいたので猛烈に眠い。
目覚ましを見やると、8時35分を指している。
なあーんだ、まだ、8時半か。まだまだ早いじゃんか。夏休みですることはなにもないんだ、

だが・・・

待てよ、ジャスの朝飯・・・何時だったっけ?
『ご飯は(必ず)毎朝八時半に与えていますのでよろしく』
この時計はいくらか進んでいるから、言うなれば8時半ジャストなのである。

そうだったな。それにしても習慣とは恐ろしいものだ。
でもこう眠くてはどうしようもない。

『ジャス、分かるだろう? ここはおまえの家ではないんだよ。だから自分の家のように、なんでもかんでも同じようには行かないんだよ。あと30分だけ寝かせてくれよね』

そして僕は再び眠りに落ちてしまったのだ。

しばらくして、軽く頬をぽんぽんと叩かれたような気がした。眼を開けると、ジャスがまた僕の胸を跳びこえて隠れてしまった。

「おまえしつこいぞ。性格は飼い主に似てくるっていうけれど、これほどまでに・・・」

どこに隠れてしまったんだい? 上半身を持ち上げて部屋を見回すと、ミヌーが昨日と同じところにうずくまっている。ことの成り行きを見守っているのだ。
僕のほうへちらり、そしてジャスが隠れているとおぼしきベッドの下へちらり。

『ジャスさん、あまり無茶をなさらないで。うちの主人は一旦癇癪をおこすと、手に負えなくなるのだから』

時計は九時をちょっと過ぎている。
『ご飯は、毎朝かっきり8時30分に決まっているので、その通りお願いいたします。お宅の猫とは違って、ジャスは規則正しい生活に慣れているのです。飼い猫にはそれが大切なのです!』
花村氏の声と顔が迫ってくる。

「畜生! 郷に入れば郷に従えとか何とかと言うではないか。こうなったら、あと一時間、絶対にメシなんか食わせるもんか。言いなりになればこの2週間、神経が参ってしまうのはこっちなんだから、最初が大切、最初が!」

又、眠ろうとしたが、もう眼が冴えてしまって眠れない。だが、こうなったらこっちも意地だ。眠っているふりをして相手の出方を見ることにした。数分たったが何も起らない。そのうちにまた本当に眠気が。

だが、3度目は確かに起ったのだ。
ジャスは僕の鼻の先をがぶりと噛んだのであった!
「痛ってェ!!花村ネコ、何をする!」
だが、それも軽く、歯形が付かない程度に。
猫って、人間よりも行動をコントロール出来る動物?などと、しみじみと感心している場合ではない。
僕は飛び起きた。
「分ったよ、分ったってば!」
このままにしていたら、4度目は何が起るか分らないぞ?
薬箱はどこだ?救急車の電話番号は?!

台所に駆け出して缶詰めを開けた。
もちろん、それからの12日間、僕が自分の役目をどう果したかは、ここに記すまでもないことである。(見知らぬ客/完/K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 08:36 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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