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イタリア猫ショートショート/あと47話


mmm


名ソプラノと名テナーの悲劇/1


マリア・ガラス女史は戦後のオペラ界を制覇した世界的名ソプラノ。
マリオ・デル・ボナコ氏もカルーソーの再来と詠われた世界的名テナー。

二人の共演は世界中のオペラファンの夢でした。
容姿も完璧な2人を、世界の一流歌劇場が争って共演を実現させようとします。

そして、ついにそれは夢ではなくなったのです。
彼らの共演の夜は、切符を10倍も100倍も吊り上げてしまうダフ屋がうろつきますが、それも完売なのでした。

ところが・・・
歴史的名演とうたわれた名コンビの『ラ,とラヴィアータ』ボストン公演の翌日、あるゴシップ記者がすっぱ抜いたのです。

「舞台では仲良く悲劇のカップルを演じてても、実際には,2人は犬と猫の仲。
共演の後は、どっちがカーテンコールが多かったか口論するのはいつものことだ。
『あたしは12回呼び出されたわ』とガラスが自慢すると、
『ボクは10回だったけど、拍手のボリュームがすごかったのは、君、知ってるよね?』
と、デル・ボナコが反論する具合なのである」

以後、本番寸前になってもめごとが多くなり、ファンをやきもきさせるのですが、それだけに実現された夜は、興奮の渦と化すのでした。

ガラス女史は大変な愛犬家でコーギーを飼っているのは有名でした。
そのコーギーが子供を産んだので、彼女は大喜び。

外国の公演先から自宅に電話して、愛するコーギーの声を電話で聞かずにステージに立ったことはありません。一度など、家政婦が「コロ(小犬の名前)が風邪気味なの」と、つい喋ってしまったので、心配のあまりガラス女史もザラザラ声になってしまったとか。

以来、公演の旅にも連れて回るようになり,あげくのはては、楽屋にもお供させるほどになったのです。

「マリア、考えてくれ。劇場にペットはちょっと」
抗議する支配人に、
「契約キャンセル?それとも犬OK?]
高飛車に出られて、泣く泣く劇場は承諾したのでした。

黙っておれないのがデル・ボナコ氏。
「じゃあ、オレも愛するルルを連れて来てもいいんだよね?」
そして、最愛のペルシャ猫ルルを楽屋に連れて来るようになったのです。

                 *

スカラ座オープニングの12月7日の夜。
ヴェルディの『仮面舞踏会』で幕は開きました。

第一幕も無事に終って・・・
第二幕の魔の山のシーンです。

魂をかけて忠誠を誓う部下の、妻と君主の密会。

このオペラの白眉、デュエットの最中、どうしたことか、ガラス嬢はいきなり黙りこんでしまったのです。
そして・・・

ハクショーン!

大きなクシャミを3つもしたのです。
指揮者はオーケストラにストップをかけ、彼女の再スタートを待つことしばし。

会場は騒然となりました。
いきなり反対派(どこにでも敵はいるものです)が、大声で笑って手を叩いたので、彼女は悔しそうに涙しながらも、気を取り直して指揮者に指示を与え、最後まで歌い切ったのでした。

それは、プリマドンナの実力と権威を認識させた、忘れがたいステージでもありました。

その夜はイタリア大統領や某国の女王陛下も臨席していたのですが、この名歌手に惜しみなく拍手を送っていたということです。

公演後さっそく記者会見がありました。

激怒したガラス嬢は質問も待たず、開口一番、
「猫の毛が鼻の穴に入ったのよ!愚かなデル・ボナコの憎むべき猫の!!」

至難でドラマティックなドゥエットの最中、彼女が大きく息を吸ったとき、猫の毛がふわっと吸い取られて鼻の穴をくすぐったというのです。

「3つのクシャミは凄い!手で鼻を押さえることは出来なかったのですか?」
「デル・ボナコがしっかり抱きしめている腕の力を抜かなかったから、私は金縛りになっていた」

リカルド伯爵に扮するデル・ボナコ氏の黒いマントには、猫の毛がいっぱい付いていたというのです。舞台袖で、
「マリオったら、猫の毛だらけよ。ブラシを当てなさいよ」って注意したら、

「これかい?ボクのPortafortuna(幸運を呼ぶ印)なんだ。コスチュームにルルの毛が付いていると、不思議によく歌えるんだ。抱いて歌っている気分でね」
(例え,抱き締めてるのが君でもね)

デル・ボナコの記者会見は別の日にありましたが、彼は痛そうに足を引きずっていました。
クシャミの後、彼女のかかとで、思いっきり指をふんづけられんだそうです。

「ステージでマリアを抱き締めると、いつも犬の匂いがすんだ。ときには強烈にね。でも彼女のPortafirtunaだと思って知らん顔してるんだよ」
と、やり返したとか。(つづく)




| 猫.cats,gatti 100の足あと | 06:00 │Comments2 | Trackbacks0編集

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コメント

オペラのイラスト、さっさーと旨く行かず、何度も修正したので、重くなってしまい、やり直した方がいいかな?などとおもっていたけど....眼に留まってもらって嬉しい。
ラストは以前指摘されたように、簡潔に終わるよう心がけているんだけど、まだ?
帰国までにせいぜい『あと25話』くらいまではたどり着きたいと思っているけど。
とにかくコメントありがとう。激励を肝に命じて頑張りたい。k
*

2009.09.04(Fri) 03:45 | URL | k|編集

operaのマントがなんとも素敵なステージで 演出家の名前は?・・と伺いたくなるほど。
しばらく作品を読ませていただかないうちに 随分中身の濃い 沢山の作品が仕上がっていたので 驚いています。
笑い話のようなりりーの愛人名の落ちも最高。ちょっと気になったのは 全体的に締めくくりの文章がどの作品も少し説明し過ぎかも・・・ ポトン!と出た結末は読者に任せたほうが さらに広がりが出るような気がした作品もありました。少ない言葉で締めくくっても私達 読者はそれなりに研二節を楽しんでいるのですから。イラストはさすがに立派さがぐんぐん増してコレが100作品もたまるのかと楽しみでなりません。ガンバレーーー!! 電車の中のさまざまな客の表情がすばらしい!まさに勝手なイタリア人たちの乗り物の中って感じで 懐かしいよき時代のラッシュを思い出しました。だって最近はイタリア人はどこへ行ったの?・・・て感じの乗り物の中ですからね。ふわっと雰囲気があふれるイラストで すばらしい!
*

2009.09.04(Fri) 03:43 | URL | k|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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