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猫ショートショート<あと36話>
留守中にネコの面倒見てもらうことになったが、お礼は何をしようかと悩みっぱなし・・・
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タクシーの運ちゃん・エンリーコ{1} 

上に住むタクシーの運ちゃん・エンリーコと急速に親しくなったのは、夏のバカンスも一週間後に控えていたときだ。 
「旅行中、誰かがカロータの面倒を見てくれるのかい?」
 エンリコが聞いたので、
「この2年間はペンションに入れてるんだ」と言ったら、
「なんだって? ペンションだって? 病気が移って死んでしまうぞ。よし、おれが面倒を見てやる」

 自分でも猫を飼っているエンリコは、有無を言わさず引き受けてくれたのである。
「これはほんの気持ちだけど、取ってほしいんだ」
ブラジルに出発の前日、エンリーコに謝礼として小切手を渡そうとすると、急に厳しい顔になった。
「 馬鹿を言っては困るよ、俺達は友達だろ!」
とガンとして受け取ろうとしない。小切手を手にして押し問答をくり返したが、結局こっちが下りた。

「彼は多分南部の人間なのだ。誇りを傷つけるようなことになったら、コトがややこしくなるぞ。俺なら、そうかい? グラツェエミッレって、あっさり受け取るがね」
と言ったのは、ブラジル旅行の相棒であるマルコ、彼は生粋の北部人なのである。

だからブラジルを旅行している間、おみやげのことが頭から離れなかった。
旅行はほぼ一ヶ月、長い。その間毎日来てもらうのだ。いくら近隣のよしみとは言え、粗末なみやげ物であってはならない。だが、せっかく高額払ったのに、安物と思われても困る。大体、エンリコの好みだって何も知らないのだ。タクシーの運ちゃんの文化的レベルとは、どの程度のものなのであろうか。
旅行も終わりに近づいてくると、気が気ではなくなった。あいつ、小切手を受け取ってくれていたら・・・ああ、これならカロータをペンションに放り込んどけばよっぽど楽だったかも。

義務的なおみやげをするほど苦痛なものはないってこと。
とにかく、父子揃いのTシャツだとか御影石の置き物(これは結構値が張った)とかそろえて、ミラノに戻って来るとすぐにお礼に行った。
だが・・・ありがとう、と嬉しそうに言われても、ほんとうに喜んでくれているのかどうか疑わし気に、相手の顔色をジーッと見てしまう。

「カロータがすっかり俺になついちゃってね。ドアのところで、もう、体を擦り寄せて来てねェ、アッハッハッハッ」
エンリーコにそんなことを言われても、的外れのことを聞いているようで、別に嬉しくもない。知りたいのは、選りに選り抜いて買って来たお土産を気に入ってくれたかどうかである。これだけ苦労して買ってきたのに「喜んでもらったんだ!」と、ずしーんッとこないのだ。

「いずれ落ち着いたら、我が家に食事に招待するよ」
と、帰りしなに、フッと思い付いて言ったら、エンリーコの顔がキラリと輝いた。
「ブラーヴォ! そう来なくちゃあ」

明らかに手ごたえがあった。
簡単なことではないか。どうして食事の招待のことを考えなかったのだろうか。
手みやげプラス食事の招待で謝礼は『完璧』になる。
(そうと分っていたら、あんなに値の張る置き物でなくてもよかったのだ。我が家のサロンに飾れば最高だったのに・・・)   
                                                                                                                                                                                                                                                                                      
善は急げと、さっそく招待は翌週の金曜日の夜ということにした。
内装したばかりのダイニングルームで食べよう。自慢のクリスタルのテーブルは6人用である。
さてと、問題は6人のリストである。エンリーコと女房のベッタ、小学校一年の息子も一応数に入れておかなければならない。あとはボクと、一緒にブラジルを旅行したマルコと、親友の虹子。彼女の旦那はこのところ、出張ばかりだそうだから都合がいい。これで満席だ。

「来週の金曜の夜にご招待だ。8時半でいいかい?」
とエンリーコに伝えると大喜びでOK。

ところが次の日やって来て、子供は翌日学校があるから出席させないと言う。
「じゃあ、誰か呼びたい友達がいたら連れて来ても構わないよ」
エンリコの交際関係が結構盛んなことは気が付いていたからだ。

待ってました!
「甥のニコラと彼のガールフレンドを連れて来てもいいかな?」
「もちろん!」と答えたが、そうなると7人になってしまう。
ちょっと窮屈だが、仕方がない。このディナーはエンリーコへの返礼なのだから、彼の満足行くようにしよう。
ところが・・・

「親友のジャコモとアルドも呼んでいいかい? 俺、Kに頼んでやると言ってしまったんだよ。・・・でも」
彼はちょっと言いにくそうに、
「そうなるとNとGも呼ばない分けにはいかないだろうな」

気は確かなのかよ!
会った事もない見知らぬ人間が6人も、我が家のクリスタルのテーブルに顔を並べているのを想像して、背筋がゾッとした。(つづく)


                   

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 09:15 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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