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イタリア猫ショートショート<あと30話>
カロータが死んで,専用の切り窓も不要となった。

kuguridoa2

カロータの専用出口
何年ぶりかで本腰入れてバルコニーの掃除をした。
台所専用の大きなバルコニーだが、以前は猫用の砂などを置いていたところだ。

ガラスドアの小さな切り窓も、もう、必要でなくなったので枠をはずしたら、猫の毛がへばりついていて、真っ黒になっていた。アルコールでごしごし拭いても17年間の歴史。そう簡単に奇麗にはならない。

「猫用の窓が必要ならば先に言ってください。ドアが出来上がってからでは無理なので」
17年前、注文を取りに来た男は言った。
出来上がって届いたのは、モダンで頑丈な金属製のガラスドア。
右側のドアの下っ端に麗々しく、当時としては超モダンな切り窓が設置されていた。

        *
カロータは生まれて3ヶ月後、我が家の住人となった。
もう秋の深まりもすぐそこだったから、最初の課題はこの切り窓を理解させることだった。

オレは寒がりだからドアはきっちり絞めて寝たいんだ。
「さあ、これがお前専用の出口。早く覚えてくれよな」
カロータが来た日の夜から、訓練は始まった。
カロータを切り窓から出して入れて、出して入れてと10回近くも繰り返したが、
全く他人ごと、覚えようとしてくれない。

翌日もその繰り返し。全く効果なし。
これじゃあしばらく忍耐が必要だぞ、とこっちも観念したのだった。が・・・

その夜遅くまで、ボクはキッチンのテーブルで手紙を書いていた。
カロータは足元で飽きもせず戯れている。
よくもまあ、つぎから次ぎへと遊びを発明するもんだなあと見とれていたときだ。

突然、彼は切り窓に向かって驀進!
頭からドーンと突っ込んでバルコニーにとび出たのだった。
プラスチックの蓋が大きく音をたてて前後に揺れる。

バルコニーに飛び出し、カロータを高々と抱き上げた。
「悟ったのだな、ヴラーヴォー」
そのときから、カロータは我が家の一員となったのだ。


手術をほどこしたらカロータはどんどん肥えていく。
体も大きくなって大トラになった。
赤の大トラのカロータ。
「なんぼ何でも太りすぎだよ、こいつは」という知人たち。

そのうちにますます肥えてきて、切り窓を通過するのがひと苦労になってきた。
何とか通過しようと腹をねじまげ、ウーウーンと大奮闘してやっとバルコニーに出るカロータ。

家の中に入るのに、ドアを開けてやっても、やっぱり窓を通して入ろうとするのがおかしい。
こいつちょっと知性が足りないのでは? 
でも可愛い。


年を取ってきて、痩せが目立ってきた。病気なのだ。
「あと6ヶ月がせいぜい」と獣医に言われ、ボクはショックを受ける。
でもその後、4年近くも生き延びた。

「あと2ヶ月だね」と同じ獣医が言ったとき、
「以前、命は6ヶ月がせいぜい、と言ったの覚えてます?あれから4年以上も生きてたんですよ」
「へえ?そんなこと言った?」
このヤブ医者め。

切り窓を通り過ぎるのも、何の苦労もしなくていい骨と皮ばかりのカロータ。
その変わり果てた姿を、ボクは切ない思いで眺めていた。

切り窓はカロータの思い出のしるし、彼がこの家で17年間生きてきたあかしだ。
これを作らせたとき、年取って死んでしまうカロータのことを想像しただろうか。

プラスチックの枠は取り払ったけど、穴は残っている。
奇麗に切り込まれた穴から秋の風が吹き込んで、去って行く。

Via con Carota.
(Gone with Carota)(k)







| 猫.cats,gatti 100の足あと | 16:04 │Comments3 | Trackbacks0編集

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コメント

Re: カロータちゃん

> ご連絡いただいてから、すむらさんのブログ、少しずつですが、通勤時に携帯で読んでいます。
> カロータ君、亡くなったのですね…。ミラノでお会いしたときがとても懐かしく思いだされます。あれからもう6年以上も経つのですね。
> 人参色の毛並みが印象的なかわいい猫ちゃんでしたね。
> カロータ君と撮っていただいた写真、久しぶりに見てみたいと思います。
> また思い出話、聞かせて下さい。

2009.10.30(Fri) 09:47 | URL | ban|編集

Re: タイトルなし
カロータには手術をほどこしたので、その移り変わりを一生見てました。
哀しいですね。動物の死って。k

2009.10.15(Thu) 22:27 | URL | k|編集

カロータが切り窓から出て行くお尻が可愛いわね~
歳を取るとお尻がやせ細って心なしか湾曲して..
うちの子も同じでしたよ。カロータにだぶって
思い出してます。AKI

2009.10.08(Thu) 14:58 | URL | AKI|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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