上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- │Comment- | Trackback-│編集

イタリア猫ショートショート<あと27話>
mar

マルチェッロ 

我が家のカロータがよそ様の家に紛れ込んでお世話になったことは話した。
ところが、今度はその逆、見知らぬ猫が、我が事務所に飛び込んで来たのである。

 ドアを開けたとき、その猫は待ってましたとばかり、事務所の中を突進、我が物顔で駈け回り、よそ様の家に入って来た戸惑いなど全くゼロ。
濃いキジ猫だが、喉のところに白いマッキア(染み)があり、赤い首輪が可愛いらしい。

カロータよりも幾分小柄である。
ミルクを与えると、ちょっと口にしただけで、又、猛烈な勢いで走りまわる。腹は減ってないらしい。

仕事机にも飛び上がる。日中は我々と事務所で一緒に過ごすカロータはびっくり仰天・・・と言うより取り乱している。
無理のないことだ。母猫や兄弟猫達と別れて以来、いまだかって猫族にお目にかかったことがないのだから。

カロータはロッカーに飛び移り、うずくまり、その眼は興味と恐怖で大きく見開かれ客を追っている。
以前カロータが家を間違って六階のアパートで一夜お世話になったことがあるけど、この新来も一泊くらいさせてやりたい気持ちになる。可愛いのだ。

 夕方仕事が終って、2匹の猫を我が家に連れて帰って来た。

カロータは興奮しているらしく箪笥の中に入ったまま出て来ようとしないし、食欲もないらしい。
客はといえば、ガツガツと平らげて、終るとソファーにごろりと横になる。
『諸君、では、おやすみなさい』
って感じなのだ。

カロータがいつのまにか箪笥から出て来て、サロンの隅にうずくまり、ぐっすりと眠りこけている客を凝視している。
だが何事も起こらず一夜が過ぎた。

 翌朝、さっそく掲示板に広告をだした。勿論、クレパスの似顔もつけて。
『早く、僕を迎えに来て。家に帰りたいの。今、僕を泊めてくれている人は、三階のK氏。電話番号は・・・』

 午後、突然玄関のベルが鳴ったので開けると、女の子が二人立っている。妹らしいほうは、まだ小学生くらいの幼い感じで、お菓子の箱らしきを両手で恭しく掲げている。

「さあさあ、遠慮なく入って下さい」
2人を事務所の中に通した。
走りまわる猫を捕まえようとするが、そう簡単には行かないようだ。スタジオの若者達も、仕事そっちのけで子猫を追いまわす。

「マルチェッロ! さあ、いい子だから逃げないで。帰リましょう!」
「マルチェッロ? 人間みたいな名前だな」
「そう、人間みたいなものですわ」
と、姉さんのほうが笑いながら言う。

やっと子猫を捕まえた。
マルチェッロは腕の中に入ると急に大人しくなり、まんざらでもなさそうに娘の腕をぺろぺろ舐めたりして、情愛を示す。

姉妹は、2階に住んでいる親戚の所に、猫を連れて遊びに来たのだそうだ。
昨日着いてすぐ、ちょっと油断している隙に猫が姿を消した。

「これ、あたし達のお礼」
それまで珍しそうに事務所の中を見回していた妹のほうが、ややはに噛みながら、チョコレートの箱をうやうやしく机に置いた。そして彼女はロッカーの上でうずくまって、我々を見ているカロータに近づいた。
「可愛いわ、名前は何て言うの?」と頭を撫でようとしたときだ。
カロータがいきなり『ハーッ』とやったので、彼女はびっくりして後ずさりしてしまった。
あまりそんなことはやらないカロータなのに、マルチェッロの訪問によっぽど頭に来ていたのだろう。

姉妹はもう一度「グラツィエ」と礼を言うとマルチェッロをあやしながら帰って行った。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 20:29 │Comments2 | Trackbacks0編集

| top|

コメント

元気で活発、傍若無人のマルチェッロにカロータが
自分のテリトリーを荒らされて寝ることも出来ない
ほど神経痛めつけられたのね~!可愛そうに..!
マルチェッロの飼い主が現れて良かったわね。
カロータの安堵とそれまでの我慢が見えますね。

開けられた扉に飛び込んできた猫の姿しっぽが勢い
感じさせます。

2009.10.18(Sun) 12:18 | URL | AKI|編集

家猫カロータ君、乱入マルチェッロを許しがたし・・・・
の心境だったんだ~~

Kさんの似顔絵入りの迷い猫探し広告は、ご近所で
すぐ目に付いて、そりゃ~効果絶大だった思うわ!!

2009.10.17(Sat) 14:43 | URL | まこ|編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sumurakenji.blog112.fc2.com/tb.php/191-706c4790

すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

すむらけんじへメールする

名前:
メール:
件名:
本文:

イラスト、写真、文の無断使用を禁止

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。