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イタリア猫ショートショート<あと22話>
mil

ミルク
ジャンニーナは猫を抱き上げると,ソファーに体をうずめた。

「可愛いわねえ,ネコちゃんて。もっとおっかない動物だと思ってたけど」

名前はベリン、過去の愛人の名前らしい。

ベリンはふっくらしたおっぱいの間に挟まれてしばらくじっとしていたが、やがてぞもぞと動き出した。

あらァ、くすぐったいわァ。

母親のおっぱいよりももっとふわふわで甘い香りがする。

彼は四つの足で立ち上がって大きく伸びをした。

女主人の顔を凝視する。

そして・・・前足で交互に上下運動を始めたのだ。
すごーぉい、やわらかーい。

いち、に、いち、に、いち、に・・・

「このネコったら変ねえ。オスネコってみんなこうなのかしらん?」
ネコを生まれて初めて飼い、猫のことなど何にも知らない彼女は呟くのである。

「でも、このネコが素敵なことをしてくれることだけは確かね」
うっとりとジャンニーナ。

翌日の夜、ジャンニーナが外出から戻ってきたときのことだ。
コートを脱いで、彼女ご自慢のおっぱいを強調した赤い絹のドレスの姿でサロンにはいってきたとき。
ベッドにうずくまっていたべリンがいきなりむっくり!

ジャンニーナ目掛けて飛び掛ってきたのだ。
主人のおっぱいめがけて。

「あらまあ、ベリンったら!」
ジャンニーナはびっくりおったまげて、ベッドに尻餅をついてしまった。

ベリン、また昨日にように、前足を動かしはじめた。

いち、に、いち、に・・・・味を占めたネコは何とも強引。

ああ、ふーっ、ばかねえべリンったら・・・あたし、気が遠くなりそう。
べリンは繰り返す。
いち、に、いち、に、いち、に・・・


「獣医さん、うちのネコったらとっても変なの。私のおっぱいに飛び込んできて、前足の上下運動するんですの」

「いいですなあ、私もお宅のネコちゃんになりたいですねえ。ネコが前足を上下させて、つまり・・・もみもみするのはですねえ、母親のおっぱいと思い込んで、お乳を飲むための前儀とも申しましょうか」

もみもみだなんてこの獣医はちょっと下品ね。

「まあ、そうだったの。あたしのおっぱいをマンマのおっぱいと思い込んでいるのね。可愛いわあ。じゃあミルクもあげないとね。いろいろ勉強しなきゃあ」

ジャンニーナはネコのいち、に、いち、に、がすむと抱き上げて、
「さあ、おいしいミルクを飲みましょうね」

冷蔵庫からミルクのパックを取り出し、小さなお皿になみなみと注ぐ。
べリンはおいしそうに飲む。

ベリンの、いち、に、いち、に、は毎日の日課となったのだ。

「ベリンったら、すごくマッサージ上手なんだもの」
ボクもうれしいよ。だっておいしいミルク飲めるんだもの。

「すごいですなあ。ネコちゃん幸せですなあ」
予防注射をしに来てくれた中年の獣医はちらちらっとジャンニーナのみぞおちに目をやりながら言うが、彼女は知らん顔をしている。
            
         *

朝の公園を散歩しているジャンニーナ。

白樺の林の図書館の前に出た。
ジャンニーナがベンチに座ってタバコをすっていると、黒いカバンを斜めにかけた若者が、大またにい階段を上っていく。そしてドアを入ろうとしていた。

ジャンニーナと目が会うと、若者は赤らみ、はにかんだように笑って中に消えた。

「ときどき見かけるけど何て素敵な坊やかしら。彼が仕事をする姿を見ながらひとときを過ごすのも悪くはないわね」


気配にきづいて振り返った若者。真っ赤になり、
「・・・あの、ボクに何かお役に立つことがありましたら」

ジャンニーナはちょっと考えるふうをして、
「何を読もうかと考えているの。今朝はむしょうに本を読みたい気分になっているのよ」

「すばらしいですね。たとえばどんな本を?どんな作家の?」
「さあ、・・・モーパッサンなんかいいわねえ」
彼女はモーパッサンとダンテの名前しか知らないのだ。

「モーパッサンの『べラミ』なんてどうですか?」
青い大きな瞳で、彼女の胸元をチラっと盗み見しながら、上ずった声で言う。

「べラミ?どんなあらすじなの?」
「貧乏な青年だけど、上流階級の女性に取り入って成功していく話です」
「まあ、面白そう。成功談話の男性版なのね」
ちょっと過去を振り返るような眼差し。

もう男なんてたくさんよ。

わたしは自由が欲しいの。自由に生きたいの。
・・・でもこの坊や、可愛いわァ。

若者が探し出してきた本を手に取りながら、
「こんな長編、時間がかかりそうね」
「貸し出しもしているんです。持って帰られてゆっくり読まれたら?。他にはどんな本を?」
「ネコの本をたくさん読みたいの」
「猫の本なら、いっぱいあります」

若者は瞬く間に抱え切れないほどの猫の本を手にして戻ってきた。

「猫を飼ってるんですか?ボクもネコは大好きです」

「あら~っ、そうなの?・・・でもこんなにいっぱい持って帰れないわねえ」
「・・・あの、選んでくださったらボクがお届けしますよ。閉館の後でよかったら」
またまた、真っ赤になって小声で。



金髪の巻き毛の図書館の若者は、乳ぶさの谷間に顔をうずめたままだ。
両手でしっかりと握って、息づかいが荒く、気が狂ったようだ。

「ネコとはやっぱり違うわねえ・・・」
ジャンニーナは喘ぎあえぎ呟く。

図書館の若者はハッと顔を上げた。
「え?キミ、今、何か言った?」

ジャンジーナはやさしく若者の頭を抱きかかえた。
「・・・あのね、あんた、虎の子みたいだって言ってたの」

「ドアをガリガリやってるけど。ネコを入れてやったらいいじゃあないか」
「そう、後でね」

今はダメ、あんた、殺されちゃうわよ。
(K)

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| 猫.cats,gatti 100の足あと | 10:09 │Comments1 | Trackbacks0編集

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コメント

ウ フ フ フ ~~~ 今までのモンドと違う物語、
ミャオけんさんの作家としてのテリトリーの広さを、
知らしめしたかな~~??

でも・・・確かにツメを立てて、イッシンに柔らかいところで
上・下押す仕草を見たことあるな~~



2009.10.30(Fri) 10:04 | URL | mako|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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