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猫ショートショート・あと19話
peschici


食べそびれた昼ごはん 1

みなさん、ぺスキチってところご存知ですか?
イタリア半島のずーっと下の方、ちょうどブーツのかかとの上の辺りにあるプーリア地方の海の街です。
そんな小さな漁村にボクがのこのこ出かけたのは、ミラノで活躍する、結構偉いデザイナーのB氏がぺスキチの出身で、その漁村に500年前のころの小さなお城を持っていて、夏休みにボクを招待してくれたのです。


ボクがおんぼろのフィアットプントをたけってそ町に着いたのは8月半ばの、もう黄昏どきだった。

やっとお城についたら、門のところにしわしわの老人が座ってうとうとしていた。
ボクが声をかけると、寝ぼけ顔のお年よりは待ってましたとばかり、
「残念ながら家主は奥さんと、葬儀のためローマに行ってしまったんじゃ。5,6日は戻っては来んじゃろ」

そして僕を海岸の洞穴みたいなところに案内してくれたのである。

「ここがあんたの寝場所じゃ。好きなだけいてもよいとB氏からの伝言じゃ。飯は隣のフィッサに相談してくれ」
そう言い残すと、老人は役目は終わったとばかりせかせかと出て行ってしまった。

電灯をつけて家の中を点検すると・・・
長い細い洞窟みたいだけど、でこぼこの壁は真っ白に石膏で塗りつぶされ、床は色とりどりのタイルで敷き詰まれている。そして60センチ平方くらいのモダンなシャワーもついている。

いつの間に紛れ込んだのか、一匹のオレンジと白のぶちの大ネコが足もとでボクを見上げていた。
ミラノにおいて来た我がネコにちょっと似ている。頭をなぜてやると抵抗しないですり寄って来る。
可愛い!
抱き上げるとおとなしくボクの腕の中でじっとしているのだ。

もう真夜中に近かったので、ザイノの中にわずかに残っていた板チョコとクラッカーを食べた。
腹は猛烈に空いていたけど眠気のほうが勝って寝てしまった。

翌日目が覚めて,こんがらがった頭で洞窟のようなところに寝ていたことを思い出した。
ベッドの横のる小さなドアを開けると、強い日差しで目がくらくらするほど。南国、しかも最果てに近い所に来てるんだって実感した。
足もとから真っ白な砂浜が連なって、そのむこうに青緑の海が広がっている。
「おお、パラダイス!」

ネコの姿が見えない。きっと自分だけの秘密の出入り口があるに違いない。

お隣に住むフィッサという人の家に行くと、小学生くらいの娘さんらしい人が出てきて、「マンマは仕事に行ったわ。お昼すぎまで戻ってこないの」と言う。
色は黒いが顔のほりが深く、眼の輝きがさっき見た海の色を思い出させる。
完成してしまったって感じ。体つきはまだ子供なのにさ。

近所のバールでミラノの朝食と全く同じ、クロワサン2つとカップッチョで済ませ、海に出て思いっきり泳ぎ、疲れて紺碧の空を飛びかうウミネコを追っているうちに寝込んでしまいました。


暑さとあまりの空腹で目が覚め、起き上がったとき目眩がした。
たった数時間で真っ黒になった我が肉体。
カッコいいっ!
さあ、飯だ!と時計を見たら、もうとっくに2時を回っている。
海岸を出て、石畳の細いくねくねした細道を歩いていたらピッツェリアが目に止まった。

「もう、昼は終ったよ。夜は7時からだ」と、素っ気ない主人。

お菓子屋もミニスーパーも乾物屋も昼休みのため全部しまっている。

そのうちムレット(砕いた石を積み重ねただけの)の塀で囲まれた細道に紛れ込んでしまい、汗を拭きながらとぼとぼ歩いていると、小さな泉に出た。
そこで水を飲んで座り込んでいると、わき腹のところにあのオレンジと白の猫がいて、体を刷り寄せてくる。
ぞっとするほどの沈黙の白昼にめぐり会ったのは一匹のネコなのであった。

「道に迷ってバールもどこにあったかわからないんだよ。これでは飢餓でのたれ死だ」
聞いているのか聞いていないのか、ボクの腕から抜け出したネコはゆっくりと歩きだした。

ところがネコは、あるところまで行くと振り返り、座り込んでじっとボクを見るのだ。
ボクが立ち上がってのろのろ歩き出すとネコはまたゆっくりと進んでいく。

約5メートルの間隔をおいて・・・おまえ道案内してくれるのかい?
本当にそんな気分になっている自分だった。

と、ある角をまがったとき。
なつかしい?人声を聞いたのだった。
人声はカラフルな綱状のすだれの中から聞こえてきた。時々どっと笑い声までが。
カラフルな縄のすだれ・・・記憶にあるぞ。どこだったっけ。

わが道案内のネコは、ふりかえってじっとボクを見、お先にとすだれの中に入っていった。
ボクも店の中に・・・

直射に慣れたボクの目には大きな室内は真っ暗だった。
目が慣れてくると、部屋の中央に大きな長いい木のテーブルがあり、労働者風4,5人の客たちが座って飲んだり食べたりしている。

いつの間にか喋っていた客たちは黙り込んで、シーンとしてしまった。
ボクを見ていたのである。

パスタを口にもっていったままじっとこっちを見上げている男。回収した皿をもったままの女。

ボクは空いた椅子にどんと座り込んで一気に言った。
「時間が外れてしまっているのはわかっています。簡単なパスタだけでもいいんですよ」

コーラを手にした子供がクスリ。
ボクは空腹のため脱水状態を感じることがある。そのときもそうなっていた。
空腹がひどいと、不機嫌になる傾向もある。

「トマトソースのスパゲッティだけでもいいんです」
くりかえすボクに、
ワイングラスを手にしていた老人が初めて口を開いた。

「ここは我が家の台所でのう」
はあ?
よろよろと立ち上がる見知らぬ客に手を差し伸べるものはいなかった。

ひとつだけ見逃さなかったこと。
ネコはテーブルの上に飛び乗り、何か残り物を食べ出したのだ。

おまえさんの住処だったのかよ!(k)
このショートこれでおしまいにしたいけど、次回はせっかく準備した後編を書きます。
フィッサおばさんの登場です。
クローチェフィッサが彼女の正式の名前。
十字架のキリストと言う意味です。南部らしい名前ですね。
ではお楽しみに。

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 02:52 │Comments4 | Trackbacks0編集

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コメント

Ben tornato, Kenji san!!

長いお休みでしたねぇ~懐かしいけんじ絵を
待ってましたよ!!

犬・猫は好きな人への嗅覚するどいから・・・・・
折角家に案内してくれたのに、ご相伴のお誘いなかったのか~ 残念!!

2009.12.10(Thu) 20:20 | URL | mako|編集

Re: Re: こんばんわ、ケンジさん。
> さっそくコメントありがとう。
> ボクの38歳のときの思い出です。
> でも今はグーンと観光化されているようです。
> 先日写真見て吃驚しました。
> むかしはよかったなあ...ボクも若かったなあ...

2009.12.09(Wed) 16:33 | URL | すむらけんじ|編集

Re: こんばんわ、ケンジさん。
さっそくコメントありがとう。
ボクの38歳のときの思い出です。
でも今はグーンと観光化されているようです。
先日写真見て吃驚しました。
むかしはよかったなあ...ボクも若かったなあ...

2009.12.09(Wed) 16:32 | URL | すむらけんじ|編集

こんばんわ、ケンジさん。
どこに連れてゆかれるのかハラハラしながら読みきりました。
南部も南部ペスキチの家族なら、なんだかんだといいながらわきあいあいとプランツォをご馳走するかしら・・・と期待しておりましたが、ああ残念。
南部のお名前ってほんとうに独特、濃いですね、フィッサおばさんも。
後半はどうなるのかな、楽しみにしています!

2009.12.08(Tue) 22:42 | URL | Yoko|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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