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猫ショートショート<あと17話>

すむらけんじ


猫とミランダとチョコレートケーキ



生まれてまだ2ヶ月くらいのネコ、名前はペルー。
友達に、
「うちで生まれたんだ。貰い手を探しているだが」
と言われその気になった。

可愛い、大事に育てたい。

たった独りで留守番させるのが辛い。
方法を考えなくちゃあ。

最初は鞄かバスケットに入れて、毎日勤め先に連れて行こうかとまで考えたんだけど・・・やめた。
独身のボスが、時々でっかいシェパード犬を連れて来るからだ。

門番のおかみさんに話を持ちかけたとき、彼女、まんざらでもない顔をした。
「私はまったくかまいませんよ。ネコは好きですからね。でも、出勤前に餌をたっぷり与えたら、夕方まで何とか持つんじゃないかしら?」
「まあね。でもネコは一日中独りでいるんですから、食事くらい一日に2回新鮮なもの与えたいんですよ。それに残業があったりすると帰りが遅くなるでしょう。気になるんです」

このおかみさん、ちょっと愛想悪かったけど、それ以降、幾分ましになった。信用は持てそう。
もちろん月末には謝礼を払う。一日分5ユーロ。

鍵を渡さなければならないので信頼のおける人間ってことが先決問題なんだ。

正直言うと、僕も生活がやりやすくなった。
仕事が終わっていそいそ帰宅しなくてもすむし、
友人と食事に行ったり映画見にいったり出来るもの。

猫も飼いたい自由も欲しい。
これですべてはうまくいく。

月末もちかくなったので、出勤前に門番のかみさんに支払いにいった。

出てきたのはおかみさんではなく、40前くらいの大柄な女だった。 
「あたしは妹のミランダ。ジュリア(姉)の伝いに帰ってきてるんだけど」

シナを作って話すミランダという女。
「あたしもときどき餌を与えにいってるけど、可愛いわァ」

「そうそう、駐車違反の罰金の期限きれそうだから、早く払わないとだめよ。忙しいんだったらあたしが郵便局にいってあげてもいいのよ」
色っぽい目つきでこんなこと言う。
「ご親切にありがとう。でも土曜日に自分で払いに行くから大丈夫です」

地下鉄の駅に向かって歩き出した自分、はっとした。

彼女、何で駐車違反の罰金のこと知ってんだよ。
違反の紙切れは確かに机の一番上の引き出しに入れておいたはずだ。
そう言うことには以外と几帳面なオレ。出しっぱなしにしておくなんて絶対にないのだ。

ミランダめ!引き出しをかってに開けたな。
けしからん!

「鍵を渡すくらいだったらそれくらいは覚悟しとかなきゃあ。その類の女は、すっごく好奇心が強いんだから」
同僚は笑いながら言ったのである。

好奇心の強い女!
覗き見の好きな門番のかみさんの妹!

うむ・・・もしかしたら出戻りかも知れんぞ。

夫と別れて、次の相手を探している。
その白羽の矢にあたったのがオレだったらどうしよう。
ああいう肉感的大女は以外とオレみたいな小柄に惹かれるんだとさ・・・

その次に会ったとき、ミランダはもっとなれなれしかった。

「素敵よ、ネクタイもシャツも。アルマーニね」
やっぱり!

「ひと目見て分かるわ。以前、RINASCENTEの高級ブティック部門で働いてたことがあるの、あたし」
ふっくらした赤い口元。前歯がちょっと空いてる。

だが瞬間、

女の賛辞の言葉の裏に何かさげすみの色を僕は見た気がした。
気のせいだろうか。

下着専用の箪笥の2番目の引き出し。
どれもこれも安物ばかりだ。ボクは下着に金をかけたことがない。
下着は真っ白で清潔であれば充分だ。毎日変えている。

彼女が薄笑いを浮かべて箪笥の中をチェックしているのを想像してゾッとした。

「見えないところはお金をかけてないのね。ウフフ」
翌朝、箪笥の引き出しには鍵をかけ、洗濯物はまとめて物置に入れて鍵をかけた。

           ”

金曜日の夜、ボクが夕刻遅く、残業疲れでへとへとになって帰ってきたときだ。
キッチンに入って仰天した。

でっかいチョコレートケーキがレース編みのテーブルクロースの満々中に君臨していたのだから。
オレンジ色のバラが一輪ざしに。
ボクの一番好きなオレンジ色のバラ。

カードが眼に止まる。
可愛いネコのイラスト入りのカード。うちのネコと同じグレーの子猫。

<お誕生日おめでとう>
ミランダ

赤いマジックのハートのラインでかこまれてあるこの一言。
そうだった。今日はオレの誕生日なんだ。
オレンジ色の薔薇。

何から何までミランダは知っている。

ペルーはちょっと眼を開けたが,またすやすやとボクのベッドの端っこで眠っている。

ミランダがちゃんと面倒を見てくれてるんだから感謝しなければならない。

バカな!何が感謝だ。そのために毎日5ユーロ払ってんじゃないか。

翌日は土曜日。
調子が悪く、昼過ぎまで寝ていた。

ネコが腹を空かせてミヤオミヤオやりだしたので目が覚めた。頭痛がする。

キッチンに入って昨日のチョコレートケーキが目に入り肝をつぶした。

オレンジ色の薔薇が窓から差し込むさわやかなひざしで、ふっくらとふくらみを。
ミランダの唇を瞬間思い出す。

ケーキを見ていると、急激に空腹を感じた。

「食っちゃえ!」

3分の1までがつがつと食べたら、気分が収まった。
ああ、ミランダよ。ほっといてくれよな。

・・・でも、チョコレートケーキは最高だ。

ペルーが盛んに出たがって、ドアをガリガリやっている。
どうしたんだよ?
中庭の草を食べたいのかもしれないと、下まで連れて行くことにした。

ドアを開けると、ペルーは猛烈なスピードで階段を駆け下りていく。
ネコは成長した。

気がつかなかったが、多分倍くらいに大きくなっている。
毛がつやつやしている。
ボクはブラシなんかかけたこともないのに。

ペルーは中庭には出ず、門番の家の中に飛び込んで行った。

編み物をしていたおかみさんが手を休めて、ネコを抱き上げた。
「やっぱりここがいいんだね。でも、ミランダはもういないんだよ」

「シニョーラ、ミランダさんはお出かけですか?チョコレートケーキのお礼を言いたいと思いましてね」

・・・すごくおいしかったんですよ。
まだ甘い香りが口いっぱいに広がっている。

「ミランダはもういませんよ。旦那が迎えに来たので、よりを戻して帰っていったわ。」

え?出戻りではなかったのか。

「あの夫婦は喧嘩ばかりしてるの。もとはと言えば、ミランダが誰にも彼にも親切でおせっかいを焼くので、旦那が焼きもち焼くからなの」
おかみさんは慣れた手つきで猫をボクの腕の中に。

「独りぼっちでは可愛そうだと日中はペルーをここに連れて来ていたの。余計なことはしてくれるなってあなたが言うんじゃないかと思って言わなかったのよ」

「さあ、帰ろうね」
ネコはあきらめたようにボクの腕の中にうずくまった。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 02:19 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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