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『ヴェルディのふるさと』 1
verdi
 或る朝、ミラノの中心街エマヌエル・アーケードの中を通過してスカラ座広場に出てみたら、柵がめぐらされていたりして、日頃以上に混乱した感じである。しかもスカラ座と反対がわの市庁舎寄りに、200人? いや、それ以上の人々が列を作っているのだが、男も女も老いも若きも、じりじりと照りつける昼前の太陽の下で、結構楽しげに喋っていて、深刻な雰囲気はまるでない。
一体この行列は何のためだろうかと、いくぶん興味をそそられて眺めていると、いきなり後ろから、ぐいっと僕の襟首をつかんで叫ぶ者がいた。

「エキゾティチ、ノー!」

驚いて振り返って見ると、見覚えのある背の高い警官が笑って立っている。
何と彼は我が家の近くの警官寮にすんでいて、自動車学校では免許を取るために、一緒に勉強しているM君であった。彼は人ごみの整理にあたっているのだ。

「エキストラだよ。ジュゼッペ・ヴェルディの映画のために、エキストラを募集する広告を出したら、300人以上集まって来たんだ」
彼は汗を拭いながら説明してくれる。エキゾティチとはエキゾチックのことで、白人以外の人種をさしているのであり、残念ながら我々東洋人は、たとえその気になって応募しても対象外なのである。まったく残念! 

 RAI(イタリア放送局)が、莫大な金と時間を費やして、ヴェルディのテレビ用伝記映画を製作中だということは、久しい前から全国的な話題となっていた。 
ミラノ心臓部のスカラ座広場からマンゾーニ通りのグランドホテルまで、市内電車の路線は土で被せられ、ヴェルディが息を引き取ったこのホテルの玄関を当時の写真通りに化粧直ししてしまったり、さては、スカラ座の前にカフェを作ったりで、1800年半ばから1900年に至るエポックを再現するために大作業をやっていた。
電車はその区間は勿論不通となった。交通の混乱を避けるために、ミラノが最も静かで、市民がバカンスに出かけている8月に、まとめて撮ってしまうということなのであろう。

お札にも印刷されていたオペラの神様のようなヴェルディの伝記映画の製作ともなれば、もう国事的なことで、僕がイタリアに来て、これほど大掛かりなドラマ造りにお目にかかったことは、以後無かったように思う。真夏に人口の雪を降らせたり、雨をふらせたり、現在のようなコンピューターの時代ではないので、『手仕事』の苦労に制作者にとっては大変な夏であったろうが、幸いにも僕は警察官と親しいこともあって、何回も撮影現場を真近くで見物することができた。

現在と違って、あの頃はすべて、手作りの時代。なつかしい。(続く)

 

| オペラノスタルジー | 05:22 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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