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イタリア猫ショートショート<あと8話>


tapp

コーヒーでもいかが?


昼寝のあと、寝室のガラスドアを開けたら・・・

バルコニーのバジリコもパセリもクチナシも、どれもこれも霜を冠ったようにまっ白けなのだ。

よーく見ると、何とそれは猫の毛、なのであった。


上のほうから、ミャーオー。

上のバルコニーの鉄格子の隙間から一匹の猫が首を突き出してこっちを見下ろしている。

やっ!犯人はおまえか?

逆光ではっきりとは分からないが、ペルシャ系の毛フカフカの大猫。

多分、淡いピンク系。

すごく値の張る猫って感じだ。

そこへもう一匹、もっと小さなペルシャ猫が割り込んできて、ぺちゃんこの顔をのぞかせる。

2匹は物珍しげにボクを見ているのだった。



最近移転してきたばかりの家族の猫なんだな、きっと。

男がバルコニーに現れたので、ボクは反射的に身を引っ込めた。

またまた猫の毛を冠らされたら大変だ。

男は白っぽい布をぱっぱっと叩いて家の中に入ってしまった。

真下からなので、顔は見えない。

降ってきたのはパン屑だった。

やれやれこれから先どうなるんだろね。



そんなことがその週だけで2回もあった。

バジリコ、パセリその他、人間の口に入る物はすべて急遽台所の窓辺に非難。



猫毛パッパの住人は男女の2人で、女の方がかなり年上年行ってるということ。

管理人のおかみさんが教えてくれた。

一度、殴り込み(実はただの抗議だけど)にボクが上がっていったとき、髭づらの若い男がドアを4分の1だけ開けて、ぼそぼそっと「わかった。彼女に伝えるから安心したまえ」だけ言ってドアを閉めてしまった。

そして翌々日また、猫の毛とパン屑、爪楊枝までも、我がバルコニーを覆った。


また抗議にいったら、例の無精髭の若い男が顔を出し、分かってる!と言わんばかりにうなずいて、何も言わずにドアを閉めてしまった。眼がクリクリッとして丸顔で、ずんぐり型。

こいつ失業中?生活能力のない若いツバメ?猫との関係は?


一階にアトリエを持っている画家のPと真向かいのバールのでだべっていたときだ。

彼はあごをしゃくり僕の肘をつっついた。

「おい、おまえの猫毛女だ。名前はバルバラ」

この無名画家、アパート住人のことなら何でもかんでも知っている。移って来てたったの4年しか経っていないなんて、とても思えない情報魔だ。


女は反対側に、進行方向とは逆に止めてある車に乗り込もうとしていた。

ボルドーカラーのランチャ。
ふーん、オレのよりマシなの乗っている。
女はドアを開けて、乗り込む前になぜかこっちを見た。

ボクを見ているようにもみえた。やせたいかにも気のきつそうな女だ。
すらっとしていてセンスはまあまあってとこ。


彼女はさっと車に乗り込むとドアを乱暴にしめた。
エンジンをかけると、いきなり逆に走り出したので、向かってくるタクシーとぶつかりそうになったが、強引に斜めに反対側に行こうとする。

車から窓があいて、運ちゃんが大声でののしった。
Puttana Eva!!

だが、いっこうに無頓着、女の車は遠ざかって行った。

ボクは何とも憂鬱な気分にならざるをえなかった。 



門番のおかみさんが言った。

「あなたがとっても迷惑してるって、バルバラさんに言っときましたよ」
「ご親切にありがとう。彼女なんて言ってました?」

「あたしだって、うるさいオペラで、寝付きが悪いのよ。お互い様でしょ、だって」

何だって?

一度、CD止め忘れて、夜中の3時まで派手にやっていたことあったけど。
たった一度だけの過ちだった、一度だけの。

「5枚もペルシャ絨毯もってるらしいの。猫の毛が充満すると、棒で、ボンボン叩いて、ネ。分かるでしょ?」

「掃除機くらい持ってるんでしょう?ポンポンやらなくたって、シュッシュって」


<バルバラ夫人へ。
猫の毛でとっても迷惑をしています。
もう夏も近づいているのに窓も開けらないのです。
あなたがやめてくれないのなら、警察に訴えます。
それでいいのですか? K>

ボクは手紙をしたためて、彼女の郵便受けに入れた。
いよいよ戦いは始まったぞぉって感じだ。
これからは敵と敵、エレベーターで一緒になっても、じろりと一瞥しただけで、知らん顔。

考えるだけでうんざりしてしまうよ。



二日後、バルバラからの返答を郵便箱に見つけたときは、ちょっと緊張した。

<Caro Kenji
(親愛なるケンジだって?これまた随分馴れ馴れしいではないか)

ごめんなさいね。
あんたがとっても気分を悪くしているってこと、よくわかっているの。

いつもお詫びに伺おうと思っていながら、新しい仕事にかまけて、そのままになってしまって・・・

お願いよ、もう少しだけ辛抱していただけないかしら。

猫も絨毯も弟のものなの。

私はいつも掃除機で毛を取りなさいって言ってるんだけど、無精でだめなのよ。

だけど、もうしばらくして彼はフィレンツェに移るので、それまで我慢してね。


あなたはグラフィックデザイナーなんですってね。
お仕事頑張ってね。

バルバラ>


人のいいボクは、ついぐらぐらっと来てしまいそう。 

門番のかみさんが言ってたっけ。
「そんなに悪い人でもなさそうよ。バルバラって人」


お近かづきに我が家にコーヒーでも呼ぼうかな。

決めた!

「バルバラさん。コーヒーを一緒にいかがです、我が家のバルコニーで?」(K)





















| 猫.cats,gatti 100の足あと | 06:17 │Comments3 | Trackbacks0編集

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コメント

Re: タイトルなし
まったく。
そういわれれば。ちょっと味わいのある思い出かな。
今は近所付き合いの粗方も変わってきたし、ボクも年を取った。

2010.03.15(Mon) 20:21 | URL | すむらけんじ|編集

ダマってガマンしているだけでは、イタリアでは暮らせない~~という教訓よねぇ~

そういうお付き合いに耐えて、少しづつ強くなって、地元にねっこを張っていかねば・・・・ 

こういう人たちと、袖振り合うも多少の縁で、段々良いご近所さんになって行くのかも・・・・・・
メデタシ!!

2010.03.15(Mon) 19:36 | URL | mako|編集

パチパチ拍手!落ちが良いですわね~!
けんじさん、冴えてますね~
ついでに猫の毛入りのコーヒーにしましょう。

2010.03.15(Mon) 13:22 | URL | AKI|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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