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イタリア猫ショートショート<あと7話>

otentosama



おてんとう様

「また、日本人の神秘的建築学論が始まるのね」
エヴァという女はため息まじりに言う。

「どこから朝日が昇ろうととわたしの知ったことかしら。わたしは家の中に住んでいるのよ」

ところが日本人である僕は、家っていうものは絶対に南向きでなくてはならないという、硬い約束の上に建っていると思い込んでいたのだ。

さんさんと降りこむ太陽は我々を幸せにしてくれる。エネルギーの節約にもなる。

日向ぼっこしながら本を読み音楽をきく。そしてうつらうつら・・・

ところがそんな感覚はイタリアの伝統的建物にはないのだ。

家はレンガや石造りで、広場を中心に放射状に街並みが作られていたりで、「南向き」云々は、建築家だって考えたこともないかもしれぬ。
真冬だってシャツだけで過ごせるほど、家中が暖房がんがん。(もっとも現代のアパートには南向きは考慮されているとか。友人の建築家は必要だと言う)

だが、まともに日差しが入って来ないほうが、貴重な家具が色あせたりしないから助かるという人さえいる。


エヴァの家に初めて夕食に招待された。

30平米もありそうなサロン。4メートルはありそうな高い天井。デコー風のレリーフ。
ため息が出た。

2つ並んでいるガラスドアはバルコニーに出られるようになっている。
「すごいサロンだね。この部屋、南向き?」

彼女は困ったような顔をした。

「さあ、どうだったかしら。そんなこと考えたこともないわ」

しつこく知りたがるボクに、うんざりしたように、
「そんなに重要なことかしら?どっちに向いているかってことが」

「朝日が昇ってくるのが見えるなら東向き。沈むのが見えるのなら西向き。南見むきなら一日中部屋には陽がふりそそぐ」
「いやよ、なんなの。暑くてしょうがないわ」
お日様にあたりたいときは、公園をお散歩すればいいじゃあない、とも言う。

それ以来、そんな話になると、
「また、日本人の神秘的建築学論が始るのね」

      *

エヴァは一匹のネコを飼うことになった。

白と灰色と紫色の瞳の猫。8歳だそうだ。
今までどんなに幸せに育って来たことかが一目で感じさせる美しいネコ。

名前はジリ。

「あなたがもらってくれて嬉しいわ。私たちも安心してアメリカに帰ることができて」
親友は感謝の言葉を繰り返して、エヴァを抱きしめた。

「とってもいい子なの。午前中はいつもバルコニーにうずくまって、小鳥やお花を眺めたりして、おねんねするの。手間がかからない子なのよ」

そして親友はアメリカに発って行った。


「ジリはいい子にしてる?」
落ち着いた頃、親友はアメリカから電話があった。

「それがね、朝が変なの。家の中を歩き回って、しまいにはみゃーみゃー泣いて・・・」

「バルコニーに出してやってちょうだいな。ジリは毎朝、バルコニーに出て、朝の太陽をたっぷり浴びるのが大好きなの。そして近寄ってくる小鳥たちとお話したりするの。」

朝の太陽を浴びるのがだいすき?バルコニーで?

そういえばこのサロンには朝日は入ってこないわねえ。
近所に住む兄さんの話によると、東側はお隣の家とを区切る厚い壁なのであった。

エヴァは初めて、家には東西南北があることを実感した。

他の部屋にはバルコニーがない。


今までの習慣をガン!として変えようとしないネコのジリ。

毎朝不機嫌きわまりないジリ。

大切なアールヌボーの陶器を蹴飛ばして粉々にしてしまうジリ。


いやよーこんなところ。早くバルコニー作って。(K)




| 猫.cats,gatti 100の足あと | 23:35 │Comments5 | Trackbacks0編集

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コメント

Re: こんにちは
他の方のコメントでは、日本でももう日当りに関心がない人たちも結構いるとか。

我が家は東西に大きな窓あり。

西日は夏は、あんまり歓迎しないけど、朝はこっちから、昼からはこっちからってわけで、一応満足してるけど。

大好きです! 太陽がいっぱい!!

2010.03.23(Tue) 14:25 | URL | すむらけんじ|編集

こんにちは
いつも珈琲タイムにここに来て楽しませて頂いてます。
ただいま東京は早朝ですが、
ものすごい暴風に加えて、雨、時折雷まで・・
怖くなるような音がぐるぐるしています。
私はと言えばこれからやっと眠るところ。

ひなたぼっこはいいですね。
会社に行っていた頃の住まい探しも陽射しが入るのは
私にとっては大事で、
条件に入れて探し住んでいました。
家賃も高くなった今はもしかしてあまり
贅沢を言えないのかもしれませんね~

ところで・・
遊びに行かせて頂いているサイトさんへの
リンクをブログ右欄に置きはじめています。
すむらけんじの猫!Cats!Gatti!さんへのリンクも
よろしければ置かせて頂きたいのですがよろしいでしょうか?

2010.03.20(Sat) 21:57 | URL | ガジャのねーさん|編集

Re: タイトルなし
> 最近は日本でも若い方達は家の方角を気にしない人
> 増えてきてますよ。日中は家族み~んな家にいないから太陽の有り難さを知らないのよ。
> ジリのストレス、よ~く分かるわね!
> 老後の住まいは太陽一杯のリビングとベランダ!
> 日がな一日猫のように過ごしたいで~す

2010.03.19(Fri) 01:46 | URL | すむらけんじ|編集

Re: タイトルなし
そうなのか。
日本も家の方角を気にしない人たちが増えてきてるんだって?
知らなかった。
勿体ないなあ。k































































2010.03.19(Fri) 01:45 | URL | すむらけんじ|編集

最近は日本でも若い方達は家の方角を気にしない人
増えてきてますよ。日中は家族み~んな家にいないから太陽の有り難さを知らないのよ。
ジリのストレス、よ~く分かるわね!
老後の住まいは太陽一杯のリビングとベランダ!
日がな一日猫のように過ごしたいで~す

2010.03.18(Thu) 03:59 | URL | AKI|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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