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猫ショートショート<あと3話>


mmm


カロータの失敗 & M夫人<その2>



「ジョヴァノット(お若いかた)、ちょっと来てくださいな」

M未亡人は、怪訝な顔の僕の手首を、骨ばった大きな手でしっかとつかむと、ドアの外へぐいと引き出した。

すごい力だ。ヨーロッパの人間は女だって大きな手をしている。
年取ってくると、骨と皮とシミだらけになり、体全体のバランスを崩して、むしろ逞しさが倍増するイメージだ。

片方の手で手すりに体を支えながら、強引に階段を下りていく。

「シニョーラ、いったい何事です?」

こっちを振り返った老婆はまたニーっと笑った。

僕の手首をしっかりと握ったまま自宅のドアを開け家の中に入って行く。
意外とさっぱりとした感じだ。家具も明るい色のものが多い。これは先に逝ってしまった旦那の趣味か、それとも彼女の趣味か。

サロンを通り抜け台所に入り、バルコニーに出る。

当然ながら我が家と全く同じ間取りである。バルコニーから突き出すように、洗濯物用の見覚えのある紐が、五本平行に走っている。

彼女は再び僕の手首をつかみ、体を乗り出して下を指さした。テラスの茶色のタイルが、我が家から眺めるよりずっと大きく眼に迫って見えた。

「ほら、あれを見て!」
M未亡人の指す方に僕は何を見たのだろうか。

それは一枚の女性用パンティなのであった!

パンティは広いテラスの真ん中あたりにふんわりと、クリーム色の艶やかな色彩を惜しげも無く披露している。結構凝った代物だ。絹のように艶やかで、安物とは思えない。

まぶし気にボクの眼は釘付けになった。

ヘーッ、このばあさんがあんな物を?

「お願い、あれ取って来てくれないかしら」

えっ?何ですって?・・・じょーうだんでしょう。
たった一枚のパンティのために、またまた例の苦労を繰り返すなんてとんでもない話だ。

「無理ですよ。夕方、下のご夫婦が帰って来られるでしょうから暫くの辛抱ですよ」

「あたし、恥ずかしいのよ。あっちからこっちから見られちゃって」
 M未亡人ははっとするような流し目で言った。

とにかくあんなところに落っこちてしまったら、どこからでも眺められるのは確かだ。
このテラスは四方を建物に囲まれていて死角というものがない。テラス付きのアパートを願望しながら、こんなテラスでは素っ裸で日光浴だって出来ないではないかと、上から観察していたのだ。

「まあ、気持ちは分りますけどね。テラスに上るまでがそれこそ大変なんです。勘弁してくださいな」

「あんたは猫が落っこちたときだって、中庭から上って行って助けたじゃあないの。わたしちゃんと見ていたのよ」
彼女は心なしかドスのある声で言った。

知ってますよ、
でもね、猫とパンティは一緒にはできません。猫は生きものなのです。


のろのろしていると、食い下がってくる気配を感じて、早々に退出しなければならないと思った。僕は腕時計にちらりと眼をやりながらドアに向かって歩いて行った。

「恥ずかしがる必要なんて全くありませんよ。どこのバルコニーから落ちて来たのか誰にだって分らないのですから」(K)
 

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 00:10 │Comments2 | Trackbacks0編集

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コメント

Re: タイトルなし
今は昔、
あのバアーちゃんすごかったな。
ボクに恨みあったのかも。
この家買ったとき、あのバーちゃんが欲しがっていたんだよね。
『約束の明日の午前中までに彼女が返事くれなかったら、きみに売るから待ちな』って、不動産のお兄ちゃんに言われて、じりじり・・・約束の時間かっきりまで机の前で待ってて、12時かっきりにサイン!ああよかったあ。
そうしたら、一時間後にばあさんきたんだって。
勿論、すっごい剣幕だったってさ。そういう因縁ある関係だったんだから、パンティ取って来てもらいたいときくらいしか、色目使わないよね。(みゃおケン)

2010.04.13(Tue) 22:54 | URL | すむらけんじ|編集

迫力の有るオバチャマの絵・文章、笑っちゃいましたよ~~

確かに居る・イル・・・・・こういうコッテリおば~ちゃま!!

幾つになっても色香を振りまいてる女性・・・
これは真似すべきか?イナか?・・・

いや~色香を匂わせる女性でいるのも、
難しそうだニャ~~~~?

2010.04.13(Tue) 16:15 | URL | mako|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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