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初めて飼った猫、パンと命名す

パン

「今夜もすごかったのう。ワシゃあ、ほとんど寝とらんでの」
目覚めた父親がつぶやく。
ネズミ・オリンピックがすさまじい毎夜の頃の話。

思いあまった父親は、どこからか子猫をもらって来た。黄色の猫だった。

我が家は大連からの引き上げ家族。
父親の故郷、山口県の田んぼの中に我が家はあった。

二階建ての貸家である。
隙間だらけでネズミばかりか、青大将とかいう大ヘビまで、白昼に家の中をまかり通る、恐怖の一軒家であった。

怖くて怖くて、小学生のボクは、日中でも一人のときは家に寄り付かなかった。

猫はネズミ退治で大活躍、あっという間におばけのような大ネコに成長した。

このネコ、ネズミを食べて大きくなったんだ。気味悪るーい!
ボクに近寄ってくるだけでもゾーっとした。

ともかくネズミは全滅した。
やたらに怖がるボクのために、親父は猫のもらい手を見つけて、どこかへ連れて行ってしまった。

                  *
16年後。
ボクは美大を出て、F社の宣伝部で働くようになる。

四丁目の洋書店でアメリカの雑誌をめくっていたら、ネコの写真を見つけた。
まっ白で、毛がふかふかのペルシャネコ(子猫)の数ページ。

かわいい!
こんなキュートなものが地上に存在していたのかって、驚異すら。

その雑誌を買ってきて模写をしたり、ネコを抱く天使、ネコを抱く女の絵をたくさん描いた。
全て鉛筆画で白黒。
人間の顔はすべて宇野亜喜良調。アキラさんの大ファンだったのだ。

サラリーマン生活にピリオドを打ってイタリア・ミラノへ。

日本から訪れた写真家N氏と知り合い、彼がネコを飼いたいと言うので手伝っていたら、何となく、ボクもその気に。

「我が家に一匹いいのがいるわよ。」と広告代理店の女の子に言われて見にいった。

子ネコは母猫のふところに隠れるようにうずくまって寝ていた。
人間の気配でもぞもぞ顔を出し、パチっと目をひらいてボクを見た。

「こいつはとてつもない大猫になるぞ。見ろ、この太い脚を」
彼女のお父さんが無造作に抱き上げて、熱っぽく言う。
ボクも熱っぽくなる。
トラの子みたいに?
すっごーい。
「このネコ、いただいてかえります」

フツウの雑種だけど、目がビー玉のようにまん丸くて声が可愛い。
その日からボクは、子ネコにメロメロのメロ。

「自分が食べる物を与えればいいのよ」
彼女のお母さんが言ってたな。
料理をお裾分け。そして横にグリッシーニを2本置いといた。
グリッシーニって何?
たとえばボッキーみたいなものです。

でも、グリッシーニには口をつけた形跡がない。
電話したら、「あんたったら、なんにも知らないのね!」

ごった混ぜにしなければ猫は食べないのだと教えてくれた。
人間みたいにあっち食べこっち食べ、ワインを一口やって、またあっち食べ、とは違うのだということが初めてわかった。

名前を考えなくちゃあ。

『牧神の午後への前奏曲』ドビュッシー作曲。そのころボクを夢中にさせていた音楽。

牧神は昼下がりの木陰で笛を吹く。
牧神のことを確かパンと言ったんだよね。

パンか。いいぞ、決めた。


「この猫。何て名前?」
『ご飯にしようか、パンにしようかのパン!』
とは、在留邦人の友人(クラシックにまったく関心がない人たち)への説明である。(K)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 10:30 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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