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猫ショートショート<あと87話>


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バッハを聴きに

「もしもし,ケンジです。今、ミュンヘンに着いたばかりです。実は、洋服箪笥のドアがバカになっているのでネコが入らないようガムテープを張っておいたのですが、飛行機に乗ってしまって、ネコが箪笥の外にいたかどうか、確認しなかったのを思い出したのです。見て来ていただけませんか?」

「ややっこしいなあ。ひと言で言ってほしい」

「パンが箪笥のなかに・・・」
「閉じ込められてるってことだ」
「かもしれないって、言ってるんです」
「よし,分った。仕事に行く途中見ていくよ。安心したまえ」


「もしもし、ケンジです。今, チューリッヒに来ています。バルコニーにネコが出ていないかどうか、確認をしないまま閉めて来たので心配です」
「又ァ?いいわよ。すぐ見て来るわ。雨が降り出さない前にね」と奥さん。

「初めて動物を飼う人間に、そんなミスが起るのは当然だよ。汽車の出発が迫っていたり、タクシーがもう来て待っているとか、せっぱつまるとそうなっちゃうんだよね。私にも身に覚えがあるけど」

ネコを飼ったことがある旦那さんは理解を見せてくれた。


通りを隔てて住むこの家族との付き合いは、小学校の息子の絵の宿題を、たまたま見てやったときからだ。

「ニーノはとっても絵が上手なの。そうよねえ,ニーノ?ケンジに見せてあげたら?」

眼にあまる、イタリア的我が子賛美。
うちのおふくろはそんな表現はしなかった。グソク、トンジなどとしたためる時代だったもん。

ともかく絵の宿題でいい点もらったと両親に感謝されたり、日曜日に食事に呼ばれたりした。

「ときどき、ニーノの絵をみてやってね。うちの子、見込みがありそうかしら?」

すぐこうなんだ。

さあ、ねえ(この程度ではねえ)、でも喜んで。そのかわりネコのゴハン、お願いしますね)


               *


「またまた、ミュンヘンかい?いいご身分だ。今度もコンサートかね?」
「ええ、復活祭前夜の聖土曜日には『マタイ受難曲』が、カール・リヒターの指揮で演奏されるのです。これだけは、毎年絶に対欠かせない。もう3年間続けて聴きに行ってます」

「すごい!君はバッハの信望者だったな。バッハの無伴奏パルティータは私も大好きだ。ケンジと一緒に『マタイ』を聴きに行きたいくらいだよ」
若いときにチェロを弾いていたというご主人と、こういう話をするのは楽しい。

「とにかく、パンのご飯をやりに来てくださるので安心して行けます。でなければ、ミュンヘンまで連れて行かなければならなかった(笑)」

「連れて行って膝に乗っけてバッハを聴かせたら?パンもきっとバッハのファンになるわよ。それとも逃げ出しちゃうかしら?ウフフフ」
(何とも女房の方はレベルが低い)

「おもしろい!パンとバッハか。パッハッハッハ」
(こっちもそのレベルにあわせる)


「エサのことは全く心配ないが、そんなにパンのこと思うんだったら、もう一匹飼ったほうがいいよ」

言われるまでもなくそうなのだ。
以来、ボクはパンの弟のことを真剣に考えるようになっていた。(k)





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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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