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イタリア猫ショートショート/ あと86話
tibi
チビが来た日

「パンがさびしかろうから、もう一匹もらうことにしたよ」

「本当なの? 小さなアパートで2匹飼うのは大変なことなのよ。勿論あたしはもらってくれるとありがたいけど」
「わかってるよ。でも、パンがひとりぼっちで可愛そうだから」
「いくらネコがかわいくても、出歩き、旅行は控えないってことね」

「そうだ!ネコのために自分の自由を犠牲にすることは絶対に考えられないさ」

というわけで・・・・

彼女直々に届けてくれたのがこのチビ。
同じ母親から生まれたパンとチビ。血を分けた実の兄弟である。

『よう来た。オレとお前のオフクロは同じだ。異父兄弟だよ。ニオイと眼と歩き方で、オレにはわかるんだ』
と、パン。なんてこと、ありうるかもしれん。

ちっこい!ネズミみたいだ。籠から解放されるやいなや、もぞもぞしていたのは数秒だけ。
飛び出すと室内をかけまわる。電気仕掛けのネズミのおもちゃ、ずばりそのものである。

雪のような白と淡いグレーのぶちで目が紫、童話に出てきそうなチビではあるが、行動はもっぱら『電気仕掛けのおもちゃ』。

「4匹生まれたけど、一番いいのをあんたのために残しといたのよ」
マリーナの自信もわかる。

チビは駆け回る。テーブルの下、椅子の上、段ボールの箱の中に飛び込んで、又出て来て走り出す。パンは追っかけ、噛み付いたり蹴っ飛ばしたり、飛びかかったり。しつこくしつこく、これでもかって。
ここはオレの家だ。まず、オレ様のテストを受けるんだよ。異父兄弟もへったくれもあるもんか。不合格となったあかつきにはオレに喰い殺されるか、それが嫌ならとっとと出て行け!

最愛のパンが別の猫に見えた。
隠されていた猫の習性。こいつ今までネコッかぶっていたんだな。
でも、ボクはちょっぴり不安を感じる。自分の知らなかった猫の一面を初めて見たからだ。

「このチビ、一度返したほうがいいのかもね。パンにいじめられっぱなしでは」

「待つのよ。動物の世界がどんなものであるか、あんたにもいいお勉強のときよ」

そして、マリーナは帰っていった。
日が沈ずみかけ、西日で赤く染まった我が家のサロン兼仕事部屋。

疲れ果てたチビ。
電池を使い果たしてしまったのか、突然コロリと倒れると何事もなかったように、もうスヤスヤ。

パンは1メートル離れたところにうずくまり、じっとチビから目を離さない。まばたきだってしない。
ながーい沈黙と時間・・・いつまで続くのだろう?

「オレ、もう寝ちゃうからな」
つきあっておれないよ。ボクはベッドに入るやいなや深い眠りに落ちた。

                 *
pan

翌朝、寝ぼけ眼をこすりながら寝室を出て来たときには、チビのことなどすっかり忘れていた。お腹を 空かせたパンが足もとにすり寄って来るはずであった。

サロンに入ってボクが見たもの・・・

仕事用椅子の上にパンとチビが抱き合うように、いたわるように寝ていたのだ。
二匹は眼を覚ましたが、起きて来ようとはしなかった。
かわいい!
パン愛しさゆえにもらった1匹、どこか覚めた気分で迎え入れた自分ではあったが。

チビはパンの顔にぺろりぺろり。
5回に1度はパンは答礼する。
チビはめでたく入居権を獲得した。

一晩のうちに成長したパン。貫禄充分だ。

『パンにいちゃんのこと、ボク、大好き』
『ワカットル 』 (K)

(けんじのひとこと}、翌日あさ、抱き合うようにして寝ていた2匹の姿は、今もって記念碑的な思い出です。でも、彼らとの別れの日は以外と早くやって来ます。思い出してもただ涙ナミダ・・・そのことはいずれ書きましょう。



| 猫.cats,gatti 100の足あと | 22:09 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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