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フランスパン
fpan

『フランスのパンは美味しい。イタリアのパンなんかと比べると、天と地の差があるほど美味しい』
そんな神話化された言葉をボクも信じていた。

実際、35年くらい前に、初めてパリに行ったとき、
本当に美味しい!
さーすが!
と思ったものだ。
そのまろやかな風味は忘れられないものとなった。

その頃のミラノのパンなんて、あの丸くて上に傷がついていて、中が空っぽのミケッタと呼ばれている類いくらいで、レストランや、招待してくれる家庭でもそればっかり、不味いことこの上なしだった。

『空っぽの脳味噌のかっこうをしたパン、えーっと、何て名前だったっけ』
などと、パン嫌いのボクは悪態をついて友人達を笑わせたものだ。

ボクが大のパスタファンになったにもかかわらず、パンが嫌いになったのはこのミケッタのせいではなかろうか。ローマではこのパンのことを、ロゼッタと呼んでいるそうである。
我々のほうのが旨いとローマとミラノで張り合っていたそうだが、あまり関心ない議論である。
                   
                    *
去年の夏、何年ぶりかでフランスをドライブした。
ベルガモ市のオリオ空港から出発の航空券があまりに安いので(何とパリ郊外の空港まで片道16ユーロ)、それを自慢気に言うボクに、
『パイロットは見習いの人たちなのね、きっと』
とはある知人の奥さんの言葉。まさか!

『無事』に着陸して、予約していたルノーに乗り継ぎ、西海岸を下ってボルドーまでの12日間、イタリアが40度近い猛暑が続いていた時だったから、最高30度くらいの旅は快適この上なしであった。
こんなに毎日葡萄畑を眺めながら走った旅も初めてである。

レストランで我々が注文するワインはデカンターの普通の赤、それでもおいしい。
特産地とは言え目玉が飛び出るほどの高級ワインがずらりで、我々は横目で眺めているだけである。
アルコールにそれほど興味を持てない自分にも友人にも好都合のことであった。

でも山盛りのムール貝のスープ、大好物のパテを心ゆくまで食べた。

 さて、パンの話に戻ろう。正直言って、『フランスパンは旨い。イタリアのパンなんて足許にも及ばない』という先入観で今回も食べたけれど、

『なるほど悪くはないよね、フランスパンだもんね』

くらいの程度で終ったのである。どうしてだろう?
言うなれば、イタリアもあのけったいなミケッタ一点張りの時代は過ぎ去って、今はもう、ミラノのパン屋ではびっくりするほどの種類のパンを出しているのだ。そして、ぐーんと美味しくなって来ていることも確か。(本場フランスのパンも毎日空輸されていると聞く)

海岸街の小さな広場で、出発前に早朝のパン屋に入る。7時過ぎだったろうか。
ガラスのケースの中は、色とりどりで目移りがするほどだ。
『あれにしようか、いや、これにしよう』
と悩んだあげく、やっとくるくるっと捲いたクルクルパンに決めて、これ4つ下さいとマダムに言う。

だが・・・彼女は知らん顔をしている。
もう一度繰り返すが、マダム、耳が遠いのか全くの知らん顔。

そのうち、鈍いこっちもやっと分かってくる。並ばなければならないのだ。
いつの間にか7、8人のパン購入者達が、行儀よく、だが眠気がまだ取れないブッチョウズラで並んでいる。ボクたちが入って来たとき、先客は2人いただけだったのだから、こっちの番ではないのでしょうか、マダム?
それが不可能なら、少なくとも『お客さん、並んでくださいね(フランスはこうなのよ)』くらいは言ってくれてもいい筈だけどね、と思う。

ところが、沈黙によって、相手を無視することによってわからせるやり方・・・これは旅行中、フランスのあちこちで出会った客扱いなのである。
うんざりするのは、殺風景な郵便局や切符売り場と同じ感覚で、美味しいパンを売りさばいていることだ。

割り込み客?を無視するマダムやムッシューの表情は、どこか
『神秘的な微笑を含んだ不思議な沈黙のフェイス』に見えるのである。

『変てこなジャポネーと相変わらず行儀を知らないイタリアーノ、何時になったら、我々の文化をわかってくれるのかしらねえ』
そんなところか。

 ふと、ミラノの近所のパン屋を思い出す。
パン屋の中でまで並ばなければならないなど、夢にだに考えないイタリア人だから、混雑するのは当たり前ではあるが、そこに店員の明るい声が響く。

『A chi tocca?(お次はどなた?)』

すると奥様方は『あら、あなたが先ね、どうぞ』
と譲り合う。
 とにかく、行列のビリに回って、やっとクルクルパンは購入した。そして車の中で食べたがとても旨かった。さすが!フランスパン。

 買ったパンを抱えて歩いている光景を、盛んに見るのもフランス特有のものだ。
それは主食となる長ーいパンが袋から飛び出しているから、我々にはそう感じるのであろうか。

『汚ったねえなあ。あれを見ろよ!』

 いきなり友人が叫んだ。
ここはボルドー市 の川沿いの下町。
なるほど、道の反対側を脂ぎった若い男が、袋なしの裸のパンを小脇に挟んで歩いているではないか!
フランスのパンは長いから、脇に挟んで歩くにはちょうどいいサイズにはちがいない。だが・・・
真夏だから、ランニングやTシャツだけの汗ばんだ脇に、パンを挟んで歩いているのを見ると、ボクも

「やっぱりやめて欲しいなあ」

と思うし、ワキガが強いイタリア人がそれを指摘するのだから実感がある。
そして気を付けて見ていると、ワキパン族がいること、いること!
 フランスパンの旨さの秘訣は、

『あの脇の下にあり』
と皮肉ったのはボクではない。

『フランスって何回来ても、どっか好きになれないなあ、どうしてかなあ』
と呟いていた、このイタリア人の言葉である。(K)




| けんじの自己流イタリアングルメ | 07:46 │Comments0 | Trackbacks0編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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