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猫・ショートショート<あと82話>

ssss

猫がスパゲッティを食べている絵談

「お前、明日の午前中で、搬入締め切りってこと知ってるんだろ? 全員提出したってのに、お前のイラストだけがまだなんだよ。日本人って、時間にはきびしいって思っていたけど、俺達イタリア人以下とはな。聞け! 明日、正午までに提出しなければお前は除名だ」

明日が搬入日最後だというのに、アイデアさえ出ず、ずるずる伸ばしていたら、幹事から催促の電話をうけてしまった。
イタリア・イラストレーター協会の、第一回展覧会のためのテーマが、『パスタシュータ(麺類)』
絵の技術だけではなく、作家のファンタジーもちょっぴり問われる展示会なのである。

さて、困った、パスタ、パスタ、どっかにいいアイデアないかと悩んでいても、出ないときは何も出ない。
パン、何かいいアイデアはないかい? 
ない?仕方がない、お前がスパゲッティ食ってるのでも描いておくか。

パンよ、お前スパゲッティ食ってんだぞ。
食ったことない? 
あれは人間が食うもんだって? 
まあいいじゃないか、とにかくお前はスパゲッティを喰ってるんだ。

真正面からアップに捉えて、その口にはスパゲッティが3、4本、ずるずるっとたれている。行儀の悪いところを見つかって、バツが悪そうに、見開いた大きな眼。これはパンの得意な表情だ。
たったそれだけのことだから、明日の朝までには必ずやれる。

その夜、遅くまでかかって、パンはちょっと薄気味悪い、だが間抜けな黒猫に化けてしまう。
パンはキジネコだが、スパゲッティを目立たすためにやや暗めに。

さて、出来上がりっ!
そして、搬入にやっとのこと間に合ったのである。

ところがところが、これが意外に評判よくて、週刊誌やテレビでも紹介されたのだ!
ネコとパスタの組み合わせが受けたってわけ。

その当時(70年の終り頃)はスーパーマンの大ブームだったから、スーパーマンが空飛ぶ出前よろしく、パスタの皿を乗っけて駆け巡るってのもあった。


この好評に気をよくして僕は、クリスマスカードにこの絵を使うことに決め、1000枚ほど印刷した。
ちょっと刷り過ぎではあったが、500枚刷っても1000枚刷っても、値段はほとんど変わらないと印刷屋が言ったからだ。

とにかく、ばらまくように送っても、引き出しの中は、まだ、ぎっしり。
だから、代理店や出版社などの仕事関係を初めとして、友人や知人、さては、憧れの有名オペラ歌手に至るまで、思いつき次第送った。

それでもまだ、カードは600枚も残っているから、ペンキ屋のおじさん、たびたびなので顔見知りになってしまった警察署の損失届けの係りの人、香水店の女の子、親切にしてくれた飲食店に至るまで、送りに送りまくったわけである。

ところが調子に乗って、『猫がスパゲッティをたべている』カードをばらまいていたら、僕の頭にゴツんとげんこを食わされるようなことに、新年早々出くわしたのであった。


正月休みも終わり、仕事はじめの第一日目のこと。
電話がけたたましく鳴って、応答に出た僕の耳に、いきなり怒ったような中年女の声が飛び込んで来た。

「あなたがKさん?」

ところであなたは?
と聞き返す暇さえ与えず、その声は響いた。

「あなたは一体なんの恨みがあって、こんないたずらをするの? 送って来た猫の絵、あれは一体何なのよ。わたし達はあんなものを受け取って、とっても迷惑してるんですよっ!」

「ちょっと待って下さいよ。一体あんたは誰です?」

「わたしはレストラン『ダッラ・ニーナ』の主人ですよ! ベルガモ通り29番の」

えっ、レストランだって?

 ・・・ベルガモ通りのレストラン『ダッラ・ニーナ』? ああ、思い出した。あの店の息子らしい若者に、カードを送ったのは確かだ。

クリスマスも近づいた頃、某イラストレーターと、下町の『ダッラ・ニーナ』で遅い夕食をとって、店を出た時は閉店まぎわの12時近くだった。店の前に駐車しておいたルノーに乗り込んだものの、エンジンが掛からない。そのとき鎧戸を下ろすために出て来た店の若者が、親切にも近くに停めてあった自分の車を取って来て、充電してくれたのである。

苦境を救ってくれた、もしかしたら店の若旦那かもしれない者への、お礼のつもりでカードを送ったことを説明する余裕など、彼女は与えてはくれなかった。

「あなたはうちの店がつぶれてくれたらいいとでも思っているの? 2度とこんな嫌がらせをしたら、お巡りを呼びますよ! 黒猫は悪運を呼ぶってことは知ってるでしょ? それが、よりによって、オオ、ディオ!スパゲッティを食べてるなんて、縁起でもない!」

まくしたてると、彼女は乱暴に電話を切ったのである(K)


*けんじのひとこと /イタリアで、迷信深い人に出会って、ちょっと迷惑をしたことが2回あります。
一つはこれで、もう一つは雨傘。大雨のふっているときに、傘を買うために店(高級店)に飛び込んだのはいいが、布のデザインを見ようと開けようとしたら、「室内で傘を広げると災難が起こる」と言って絶対にやらせなかったこと。そのことはまた、いずれ書きます)

| 猫.cats,gatti 100の足あと | 22:28 │Comments1 | Trackbacks0編集

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コメント

猫がスパゲッティを食べている絵談
この作品は何時の世にもインパクトがある傑作ですねぇ!!
けんじさんの才能におめでとう!!

2009.05.13(Wed) 11:19 | URL | まさこ|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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