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猫ショートショート<あと78話>

マルペンサ~ヘルシンキ~マルペンサ  2
marpe2

がらーんとした灰色の部屋、固い椅子が2つあるだけの殺風景を絵で描いたような部屋。

ここはマルペンサ空港の入国不振者が押し込まれる不吉な部屋なのである。

ヘルシンキから着いたばかりで、こんな所に押し込められて,
不名誉なこと、むかえにきて待ちぼうけをくっている友人にも合わす顔がない。

どうしてまた、こんなことに?

あんたのようなマジな外人がそんな所に入れられちゃって・・・

そう、こっちが聞きたいくらいだ、お巡りに。

税金もばっちり払って、滞在許可書はキチンと申請に行っている,マジメ外人のサンプルのようなこのオレ・・・だのに。

ジュネーヴから入国したのが不運だった。

スイスはその頃まだ、ユーロ圏外だったから、スイス経由で入国する外人へのチエックは厳しい。
そんなことは百も知っていたけど、オレに何の関係あるのかね?

ところが、あったのである。

入国チエックの警官が操作するコンピュータの中に、ボクの名前がなかったのだ。
常識では考えられないような不可解なことが起こったのだ。
パスポートの5年前の申請はミラノ領事館となっているから,ややこしくなる。

いや、何者かに名前を消されていた?


黒猫の呪い。

たかが,窓際を譲らなかったってだけで?

思考は鉛色の翼に乗ってめまぐるしく広がって行く。

このまま,入国を拒否されたらどうしよう。
ミラノのアパートのローンが済んだばかりなのにだ。
汗と涙のシンボル、絶対手放しはできないぞ!

なぜか,昨夜は寝られなかった。
ミラノのおじさんに電話したら、カロータが吐いて吐いて吐きまくったということだった。

やはり,予感は当たった。
カロータが吐きまくったことは,不運の前兆だったのか!

さらば,カロータよ。
オレはこのまま、日本に強制送還されるだろう。
おまえの面倒みてくれる人にアパートを贈呈しよ・・・・


ぽんぽんと肩を叩かれて我に返った。
あばた面の童顔がボクを覗きこんでいた。
キミがカロータをみてくれるんで?

あばたの若い警官はボクに来るようにと無言で示し、先に立ってドアを開けて隣の部屋に通された。

そこもサップケイだが、窓があるだけ違っていた。
5、6人の警官達が好奇の眼で一斉にボクを振り返った。

頭がふらふらする。ボクは混乱している。

中央の机に座っている、年配の格好のいいボスらしいのが明るい声で言った。
「やっと,見つけましたよ、やっと!」

「ミャオ?(何がです?)」
「あなたの名前ですよ。本部に電話をしたりコンピュータの中を総ざらいして、やっと見つけたのです」

疲れきった声で、
「ミャーオ、ミャーオ(それはようございました)」

ボスは人が良さそうに笑っている。

「ミャオ、ミャオ、ミャー?(それでは、入国してもいいんですね?)」

「ちょっと,待ってください。まあ、そこに座ってくださいな」
ちょっと,厳しい顔になる。

「あなたのカテゴリーは、プロフェッシオナルとなっている。どんな仕事をしているのです?商売をしているとか、何とか」

現実的な話しになって頭が冴えてきた。
「商売?飛んでもない。ボクはデザイナーです」

イラストレーターと言いたかったが,どうせわかんないだろう、このたぐいの人たちは、と思って,デザイナーと言ったのだ。
「例えば,ファッションの?」
「いいえ,商業デザインです」

「ほう、いい仕事してるんですなあ。じゃあ、絵は上手なんでしょう?」
「ニャン(まあね)」

ボスは品良い笑顔を失わないが、その眼に鋭さが隠されている。
「じゃあ、何か描いてくれませんかね。何でもいいのです,リンゴでもオレンジでも」

ニャーオ、オレを試す気かね?
やっとこっちの番が回ってきたぞ。

君がリンゴひとつ描いただけでも、ワタシは見抜くことが出来るんだ。本物か,ただの不良外人か。
その眼はそういっているのだ。

若いのが、プリンターから引き抜いた紙とボールペンを持って来る。
「ニヤオ。ニャオニャオ?(ネコを描きましょうか?)」
「犬の方がいいな」別の若いのが口をだした。

ギャーオ、いらんこと言うんじゃないの!犬は描いたことがないんだから。不得意なものを描いて失格、不良外人と思われては遺憾だ。

「ニャオ。ニャニャギャオ(ボクは犬は嫌いなんです)」

しばらくの静寂。ボクは 3分かけて、カロータを抱いてるボスの姿を描いた。

すごいーっ!集まっていた警官たちの間から感嘆の声。

こうして,黒猫の呪いは解けて、無事入国出来たのだった。

もう、絶対ヘルシンキには行かんぞ!(k)



| 猫.cats,gatti 100の足あと | 10:52 │Comments2 | Trackbacks0編集

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コメント

お元気ですか?日本的日常生活でバタバタしているとゆっくりお返事をと思ううちに日が過ぎご無沙汰で申しわけありません。1ヶ月ぶりぐらいにブログ拝見したら楽しい記事が一杯でうれしく読みました。ヘルシンキ行きのお話、まず素敵なイラストが印象的。カロータの話に彼を思い出しました。クロネコはおきらいとのこと、我が家は黄トラとクロネコなのです。かわいいよー!!日本では幸運を運ぶといい我が家でも彼女が来てすぐに夫に仕事が入りました。残念ながら今はちょっと最悪ですが可愛さは変わりません。ちょっとこうもりのような子ですが愛らしい。
お料理もいつも楽しみです。カッペリとありましたが何ですか?プッタネスカ、おいしそう。30年前、ミラノに行くときお友達がブレラのそばのプッタネスカというレストラン教えてくださったのですが夏休みかで見つからなかったの。今ありますか?では又。コメント、書きますね。

2009.07.29(Wed) 10:51 | URL | kata|編集

猫がらみのショートはやはり良いねえ。ボクも猫かっているから2面性は良く知っているつもりです。やはり絵本にしたら良いと思うよ。文書は少し整理して、も少し短い方が良いと思うけどね。

2009.06.09(Tue) 16:05 | URL | クロちゃん|編集

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すむらけんじ

作者: すむらけんじ
ミラノに住む広告イラストレーターです。このブログは今まで飼った猫、今飼っている猫のことを綴ったものです。
作者は左耳は生まれつき難聴にかかり、人口内耳に踏み切るまでの耳の歴史、未来のことなども連載しています。

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